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光媒の花

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印章店を細々と営み、認知症の母と二人、静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付く……。三十年前、父が自殺したあの日、母は何を見たのだろうか?(隠れ鬼)
共働きの両親が帰ってくるまでの間、内緒で河原に出かけ、虫捕りをするのが楽しみの小学生の兄妹は、ある恐怖からホームレス殺害に手を染めてしまう。(虫送り)
20年前、淡い思いを通い合わせた同級生の少女は、悲しい嘘をつき続けていた。彼女を覆う非情な現実、救えなかった無力な自分に絶望し、「世界を閉じ込めて」生きるホームレスの男。(冬の蝶)
――など、6章からなる群像劇。大切な何かを必死に守るためにつく悲しい嘘、絶望の果てに見える光を優しく描き出す、感動作。


道尾秀介さんの本です。
 
いや、もう・・・・待ちに待ったよ。
予約件数が凄い事になっていて、いつになったら読めるのかと今か今かと待ってました。
 
そうこうしているうちに、「プロムナード」と「月の恋人」も刊行されましたけれども……。
 
第23回山本周五郎賞受賞作でもあります。
道尾さんの新作、読む前からわくわくドキドキして、何でこんなにときめくんでしょうね。
 
早速読み始めると、連作短編になっている事を知りました。
 
前半は、おどろおどろしいというか、どんな不幸が待っているのだろうか?という変なドキドキ感のあるいつもの展開で、そしてまた内容もいつもの展開なので半ば拍子抜けしていると、
中盤からきました。
 
「春の蝶」「風媒花」「遠い光」の3本が特に素晴らしかったです。
 
道尾さんの描く女性像は二つあって、一つが「真備シリーズ」の凛みたいな可愛らしい女の子。
それと、ミステリやホラー系によく出てくるのが、性を売り物にしてしまうような、影を抱えた女性です。
 
前半はその影を抱えた女性像が顕著に出ていて、後半は凛みたいな女性が出てくるようなイメージ。
というと分かっていただけるかと思うのですが、道尾さんはやたら性に絡めた残酷な話を書く気がしますね。
 
特に幼い兄妹の妹が犠牲になったと思われる描写は、読んでいてつい眉間に皺を寄せてしまいます。
 
それでも、「春の蝶」からラストの「遠い光」までは読ませてくれました。
終わりの予感を漂わせながら、だけど最後はほんのりと温かく、確かな希望を感じさせてくれる物語は・・・・やっぱり道尾さんにしか書けないものだなと思わせるのです。
 
最後の「遠い光」では、冒頭の話に出てくる印章店の店主の男や、幼い兄妹の兄が出てきたりと、物語の繋がりが何だかとても嬉しくなります。
 
厚めなのに、とても読みやすいし物語に惹きこまれて、一気に読んでしまいました。
読み終わってしまうのが悲しいくらいです。
 
やっぱり道尾作品は良いなあ。