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コナコナチョウチョウ

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望月花梨(もちづきかりん)さんを知っていますか?

花とゆめなどで作品を書いている漫画家です。
最近はめっきり作品を出すこともなく、今か今かと待ちわびていたのですが・・・

初期の頃の短編を集めた「欲望バス」という文庫版コミックが発売したそうなのです。
でも、コミックは全部持っているので、とりあえず買ってません。

で、持っているコミックを久々に読んでみる。
もう何度も読んでいるのに、どうしてこんなに余韻が残るのでしょうか?

望月さんの書く少年少女達は、何処か影を持っています。
過去の境遇だとか、心の闇。黒い部分を惜しげもなく絵にしてしまいます。

はっきり言うと「暗い」話が多いです。

だけど、ただの少女漫画ではないんです。
いつまでもいつまでも・・心に残り続けるのです。

望月さんの一作目『コナコナチョウチョウ』

デビュー作からして暗いです。内容も損所そこらの少女漫画家達とは大違い!

一。コナコナチョウチョウ

思春期の女の子に嫌悪感を抱く緑子(グリーン)。美人だが、自分よがりな態度を取る緑子は、クラスの女子からいじめられている。そんなグリーンを唯一かばうのが自分とは正反対に人気者の千尋(チロ)。
そんなチロをうとましく思っていたグリーン。
しかし、自分が転校しなければならないと知った時、湧き上がる想い-


一度読んだだけだと、理解できなかったんです。
緑子の心境の変化が。
でも、読んでいくうちに分かってきます。
転校先で、変わらなくちゃと前向きになる緑子を応援したくなります。

二。境界

12歳のゆーかは、幼馴染で親友のやよいとクリスマスの頃からぎくしゃくしだしてしまう。
美人で何でも出来るやよい。そんなやよいとクラスメイトのふゆき君は付き合っている。
やよいを取られたくないという思いの中、クリスマスの夜・・偶然やよいの家にふゆき君が入っていくのを見てしまい・・・

望月さんのデビュー作。
勿論絵はつたないものです。
だけど、内容は天下一品でしょう!
誰も取り上げることのない事を作品にしてしまいましたからね。
12歳で一線を越えてしまった親友達を、「くるってる!」と思いながら葛藤するゆーか。

しかし、やよいとふゆきがお互いを大事にし合っているということが分かると・・
ゆーかも少しずつだけど、変わっていく。

「私達は境界人よ。だからきっと、子供になってみても、大人になってみても許されると思うの。
とっても便利な年頃だと思わない?」

そんな12歳恐いよ・・。でも、今はそんなもんなのかなあ・・・???

三。サクラチル

幼馴染であり、新任の物理教師でもあった久保と心中し、自分だけが生き残ってしまった花森。
そんな花森が気になっている誠。

予想外に、精神的にも安定しているように見えた花森。
しかし桜の花びらが引き金となり、時々それが暗示のように死へと導かれ・・・

事故現場の遅咲きの桜の花びら、救急車のサイレン。

誠の努力で、少しずつ改善していたかのように見えた花森だったが・・・


結末が、ちょっと謎な感じで終わります。
桜の花びらを見ると、精神が不安定になる花森。
車に引かれてしまったのか?それとも??

しかし、心中って。
凄いな。望月さん。

四。金魚午睡(きんぎょごすい)

両親の離婚が嫌で、万引きをして気を引こうとするキヨ。
家から飛び出してやみくもに走り続けて辿り着いたのは、トンネル。
そしてその中に偶然居合わせたナミ。
土砂崩れで閉じ込められた二人の、暗がりの中の奇妙なやりとり。

・・うう~ん。いまいちこの作品が分からない。
最後の最後までキヨが女だって気付けなかったし。
でも、何年後かに偶然再会する所で終わるので、続きが気になるのもほんと。

五。泥沼ノ子供タチ

双子の兄弟、秋生(あきお)と春生(はるき)は、ただ単に退屈していた。
ただの暇つぶしだったのだ。

両親が別居しているので、二人だけに分け与えられたマンションに住む二人は、両親がいないという点では同じ隣に住む姉弟姉弟以上の関係らしい)を暇つぶしの対象にしてしまう所から、物語が始まる。

他愛もない子供のイタズラといえばそれまで。

だけど、その姉弟を自殺へと追い込んでしまったら???

そして今度はこの双子が繰り返す「発展性のない、破滅的な生き方」
それは、自殺に追い込んでしまった姉弟と同じ生きかただった・・。

いつの間にかお互いを基準にして異性を見るようになってしまった二人。
これはあの姉弟の呪いなのかもしれない。
そして・・・

破滅的な話です。
二人は最後までいってしまうのですが、その後秋生が家に戻ることはありませんでした。

暗すぎです。
でも、かなり余韻が残る作品。

六。夏はまだこれからだし

主人公相宮(アイミ)は中学2年生。初夏。
クラスの中に気に入っている人間が二人いる。

一人目はサトー。
実は元ヤンキー。しかし、ある時から更生し今ではすっかり人畜無害で爽やかな好青年に変わってしまった。
実は頭も良く、話しやすいのですっかりクラスの人気者になっている。

二人目は永末。
はっきり言って、暗くて目立たない存在感のない女の子だ。
しかし、2年のクラス替えの時、誰も気付いていない彼女の素顔を偶然見る。
実は物凄く綺麗な顔立ちの女の子だったのだ。

ひょんな事から、サトーが更生するきっかけになったのは、永末のことを好きになったからだと知ってしまうアイミ。
サトーの事も好き。
だけど、永末が綺麗だという事を実は知っていたサトー。

アイミが、サトーも永末も好きだからこそ葛藤する様子が共感持てます。

サトーからの告白を受け、永末が過去に学校の先生からイタズラを受けていたという事を告白する。
それでも、受け入れるサトー。

それを受け止めたい、でもアイミが・・
と躊躇する永末。

そしてアイミは・・・笑って祝福するのだった。


望月作品の私的ベスト10に入る作品です。

最終的に、どちらも失わなかったわけですが、アイミは凄いですよ。。
この話、すごく好きです。

で、こんな暗い短編なのに、作者の望月さんのあとがき「ノドアメイカガ」ではかなり弾けてます(笑)

実は面白い人らしい。
そこがいいです。

次回は、「欲望バス」編です。