No-music.No-life

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僕は君を殺せない

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問題:だれが「僕」で、だれが「君」でしょう? 夏、クラスメートの代わりにミステリーツアーに参加し、最悪の連続猟奇殺人を目の当たりにした『おれ』。最近、周囲で葬式が相次いでいる『僕』。――一見、接点のないように見える二人の少年の独白は、思いがけない点で結びつく……!! すべての始まりは、廃遊園地にただよう、幼女の霊の噂……? 誰も想像しない驚愕のラストへ。二度読み必至、新感覚ミステリー!!

長谷川夕さんの本です。
 
書店でプッシュされているのをよく見かけて、実はとても気になっていた本でした。
タイトルといいこの表紙といい。
全くの予備知識なしで、そうこの煽りまくりの帯も見ることなく読みました。
 
それが結果的に良い判断でした。
 
感想を見てみると、帯の煽り文句が期待を高め過ぎて酷評されているのを結構見かけて・・・
なんだろう、私は期待以上に好みだなと思ったので、ちょっと驚いたというか・・・
 
最近過剰な帯の売り文句の本が増えましたよね。。
それでネタバレを誘ってしまう要因にもなったり(ミステリが好きな人は事前にそんな情報を与えられたらすぐに犯人やら真相の目星をつけて読み進めてしまうでしょう)、期待を不必要にあげたうえで「なんだ全然じゃん」とがっかりさせる原因にもなったりと、私もそんな経験がある(後者)ので、何とも複雑な気持ちです。
 
さて感想。
とても好みでした。
 
誰が僕で誰が君かなんて関係なく(これに関しては私も分かった)、このふわふわした不思議な心地良さ。
不穏な気配、殺人を淡々とこなす僕、そんな僕の恋人との穏やかな生活。
「おれ」の告白めいた語りと交互に織りなす物語。
 
物語の着地点が見えない。
けれどなんだろう、心地いい。凄く不思議な感覚でした。
 
読みにくいという感想を書かれている方もいましたが、私はむしろ読みやすさを感じました。
「おれ」のキャラクターは好みですし、「僕」がどうして殺人を犯すのか、どうやってこの物語は収束するのかと思いながら読み進め、そして着地。
 
ハッピーエンドではない。けれど決して不幸なだけではない。不思議な余韻。
 
そして理解力のない私は一度読んだだけでは理解しきれなくて、色々ネタバレサイトを漁って自分なりに理解しました。
 
あーこれは、また改めて読み直したいかも。
死体や殺人描写が結構えげつない感じなんですが、彼女との生活の描写の温かみとの対比が引き立っていましたね。
 
また、表題作は中編、短編が2編収録されており、その短編もそれぞれ毛色が違う話だったので、乙一さんの白黒の雰囲気に近いかなあと思ったりしました。
 
特に短編の「春の遺書」が物悲しく切ない。そして好きですわ。こういう話。
 
要注目の作家さんですね。チェックチェック。
(4.5点)