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あたらしい家族

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医学部入学を目指し大学浪人中のアキラは、いとこの善男が営む老人グループホーム「八方園」に下宿することになる。三十半ばでバツイチ、元役者、めっぽう口が悪くて老人たちを婆ぁ呼ばわりする善男だが、なぜかホームに暮らすみんなからの信頼は厚い。赤の他人ながら共同生活を送るうち、彼らは互いにかけがえのない存在になっていく。

佐川光晴さんの本です。
 
「おれのおばさん」シリーズに繋がる話。
 
おばさんの元旦那さんの善男は、老女達をグループホーム「八方園」で預かり経営しています。
 
佐川さんのこのシリーズが好きなんですが、かと言って文章が読みやすいかと言われると違うし、手放しで大好き!というのとも違うんですよね。
けどあとからじわじわと良さが分かってくる感じというか。
 
おばさんの器の大きさが分かるシリーズですが、その元旦那さんの善男さんも凄い人でした。
 
受験の失敗により浪人中のアキラが物語を進行していきますが、別の短編でも物語の語り手になる有里と共に、この話の中では「普通」の生き方をしてきた二人な訳です。
 
その他の登場人物がほぼほぼ波乱万丈な人生を歩んでいることもあり、「普通」の二人から見た視点が一番リアルなんだよなあと変な所で関心。
 
暴言が飛び交っているように見えて、その実誰よりもホームの老女達を見ている善男と、当然ながら突然亡くなる事もあるわけで。
その命が失われた後の混乱状態のホームは、誰よりも善男がホームの雰囲気を作っていたんだなあと実感するには十分でした。
 
読むペースは遅かったと思いますが、こちらも続編が書けそうな終わり方だったので、続かないかなあ。
「あたらしい家族」になった後のその後の話も気になります。
善男の娘さんが訪ねて来てどうなったのかとか。。
 
終わるには惜しいシリーズですね。
(4点)