15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのある良多は、「小説のための取材」と理由を付けて探偵事務所で働いている。良多は離婚した元妻の響子への思いを捨てきれず、響子に新しく恋人ができたことにぼうぜんとしていた。良多、響子、息子の真悟は、良多の母・淑子の家に偶然集まったある日、台風の一夜を皆で過ごすことになり……。
監督・脚本：是枝裕和
音楽：ハナレグミ
毎度ながら観てしまう是枝監督作品。
地上波で海街diaryが放送されてまた見てしまいましたが、なんつうかほっとしますよね。嫌いじゃないんだよなあ。
（余談ですが、前日に日テレで放送された「ソロモンの偽証 前篇」が酷過ぎました。編集でカットされ過ぎて途中途中意味不明なところが出て来てしまったり、良い部分があらかた失われていて。映画はかなり満足したので、このカットはちょっとないな、というレベルでした。色々地上波では放送しづらいシーンは多いだろうとは思っていましたが、ここまでカットされてしまうと作品の良さを殺してしまいますね。
それに比べて海街diaryはちゃんと映画の良さが伝わってきましたよ）
前回の海街～では美女4姉妹がメインなので目の保養にもなる映画でしたが、今回目の保養ポイントはとても少ない！
圧倒的に女性率低かったかも(笑)
まあそれは置いておいて。
なんでしょうね、私も歳を取ったなあと。
こういう「大人向けの家族の話」がやけにじんと染みるんですよね。
年老いて行く母親の姿。もう子供とは言えない年齢になったのにも関わらず子供扱いされる唯一の場所。
孫とおばあちゃんの図。子供と親の関係。
本当に「日常」を描いている作品だったと思います。
特別なことは何一つ起こらないような。
だけど、樹木さんがね・・・上手すぎました。
「ああ。母親って、おばあちゃんってこういう感じだよなあ」という像を見事に体現していて。
何気ない言葉、仕草が「いるいるこういう人！」と思わせる自然体。
冒頭から樹木さんに持ってかれましたからね。
普通に話ているだけなのにくすっと笑える台詞の数々も、この方だからこそユーモラスなんだよな、と。
もたいさんと共演することが多い小林聡美さんも、いつものお洒落で自然体の女性、という「キレイ」な役ではなくて、ダメ弟にちょくちょく釘をさしつつも、自分はちゃっかり母親に娘の習い事のお金を出してもらっている、というしたたかさをもった「普通のおばさん」を演じているのも○。
何だかんだと弟が可愛いんだろうな、という遊び心も感じられ、何処か憎めないお姉ちゃんを演じていました。
真木よう子さんは相変わらずの美人です。
新恋人ができつつ、元夫への複雑な感情を表現しています。
また、夫と別れても息子がおばあちゃんに懐いている事を優先に考えて義母との関係を切っていないという所にも好感が。
夫は嫌いだけど義母のことは嫌いではない、という複雑な心境を上手く演じていましたね。
阿部さんはもう阿部さんでしかなかったですが、背が高いので冴えない中年を演じているはずなのにやっぱり目立っていました(笑)
競輪やらギャンブルで一攫千金を狙おうとするなんて、どっかの家の親父みたいじゃないかと思うと複雑な心境でしたけれども(笑)、この人もまた憎めないキャラクターでしたねえ。
脇を固める、池松君も久々に普通の青年な役でしたが、良い味を出していましたし。
リリーさんはやっぱり存在感ありますね。
あと忘れてはいけないのが、この阿部さんと真木さん演じる夫婦の子供役の男の子。
是枝監督は本当に子供を魅せるのが上手いよなあ。
小学生の低学年でもなく高学年でもなく、大人なのか子供なのか微妙な年齢の子だからこそ、なんだか切なくなるシーンも多々。
親の事情も分かっているから、母親にも父親にも気を遣う健気な男の子でしたね。
物語的には海街～以上になんてことのない「日常」を描いているので、何も起こらない話は苦手という人には向かないと思いますが、小説にしても映画にしても結構嫌いではない私なので、それなりに楽しめました。
日曜の朝一の回ということもありますが、観客層が樹木さんとか橋爪さん世代？と思われる高齢の方が多かったのですが、内容を見てちょっと納得。
これは「かつて子供だった大人」が観るには結構じんときちゃうんじゃないかしら。
私ももっと歳を取ったら泣いていたかもしれないです。
今回は樹木希林さんの映画！って感じでした。
「日常」映画でも、演技力がある人達が演じると見応えのある作品になるもんですよねえ。
池松君が阿部さんの役の人に作っている「借り」って結局何だったんだろう？観ていても全然答えが見つからなかったのですが、分かる方います？？
（4点）
