No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

インターフォン

イメージ 1
 
 
市営プールで見知らぬ女に声をかけられた。昔、同じ団地の役員だったという。気を許した隙、三歳の娘が誘拐された。茫然とする私に六年生の長男が「心当たりがある」と言う(表題作)。頻繁に訪れる老女の恐怖(「隣人」)、暇を持て余す主婦四人組の蠱惑(「団地妻」)等、団地のダークな人間関係を鮮やかに描いた十の傑作ミステリ。


永嶋恵美さんの本です。

 
最近読んでいなかった永嶋さんですが、相変わらず不穏な空気を出すのが上手い。
この短編集も「いやミス」の部類に入るのかな?
 
団地って、今は大分少なくなったでしょうかね。
小学校の頃は、クラスの友達に団地暮らしの人が多くて、団地の子同士の結びつきの強さや仲の良さがうらやましくも感じていたんですが、大人になってみた今は無理だなあと思ってしまいました。。
 
集合住宅、特に都会暮らしでなくったって、ご近所付き合いは希薄になっている世の中。
隣に住んでいる人がどういう人かなんて知らないし、名前だって分からない。
 
それが当たり前と思って読み始めると、この団地独自のネットワーク、情報網に引いてしまうほど。
 
とあるきっかけで不穏な単語を発していた男は、団地に暮らす得体のしれない住人。
事件が起こる前にと主婦は他の団地暮らしの主婦達にも独自のネットワークで「注意喚起」を促し、怪しい住人の行動をチェックしはじめる。
ゴミあさり、見張り、挙句の果てには宅配便のチェックまで・・・
 
普通に考えてこれ、犯罪ですからね。
なのに何故かこの本を読んでいるとそれが悪いことなのかよく分からなくなってくる怖さ。
 
多くが不穏な終わり方だったりするのですが、多くを語らない、結末がはっきりと書かれていないということが想像力を煽り、怖い。
永嶋さん独特の文章がまた上手くて、引きこまれてしまいます。
 
最後の最後はほっとする話で(これだけいやミスではない)、その収録も含めて上手いなあと唸らされる短編集でした。
永嶋さんの作品はまだパラパラとしか読んでいない感じなので、他の作品も読みたいと思います。
(4点)