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西洋菓子店プティ・フール

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女を昂奮させない菓子は菓子じゃない

スイーツは誰かの心を不意につかんで新しい場所へと羽ばたかせるスイッチ。下町の洋菓子店を舞台に繰り広げられる鮮烈な六つの物語。

千早茜さんの本です。
 
非常に好きな本だと思いました。
初期の頃の静謐でエロティックな印象から、ここ最近はちょっとだけ傾向が変わってきた気がする千早さん。
 
女性作家特有の、悪く言えば同じような小説が多い中で、独特の読後感を残してくれる千早さんは注目している作家の一人。
 
今回は表だって恋愛が主になっていない事もあるし、洋菓子がモチーフになっている短編集と言う事もあり、大分好みでした。
 
物語の中心は、パティシエの女性。
 
勤めていた店を辞め、祖父が営む下町の洋菓子店で店を手伝っている女性には婚約者がいる。
けれどずっと昔、学生時代に「親友」だった女の子の思い出が今でも心に残り続けている――
 
その女性が昔勤めていた店の後輩君、現在勤めている洋菓子店でケーキを買いあさる女性、後輩君の女友達、女性の婚約者の話と最後にまたパティシエの女性の話と続いていきます。
 
個人的に後輩君の話が好きかな、というか後輩君の実らぬ恋が切ない(笑)
ケーキにかける真っすぐ過ぎる女性の恋愛方面の鈍感さがまた憎いというか、いじらしいというか。
でもこの女性のキャラクターは個人的にも好みで、弁護士とはいえ、冴えない婚約者の何処がいいんだよー!と思いつつ、ラストの話でやっぱり婚約者に軍配が上がりましたね。
 
こういう肉体関係とかの描写がない淡い恋心的な話の方が好きなので、初期の頃の千早さんの作品と比べると驚くほどですが(とはいえ、エロティックでそれもまた良いんですけど)、ここ最近の千早さんの作品はどんどん良くなっていますね。
 
「じいちゃん」の皮が柔らかいシュークリーム、女性が作る皮がパリッとしたシュークリーム。
登場するケーキがどれも美味しそうで、ケーキが食べたくてたまらなくなります。
 
どの短編も余韻が残り、ああ好きだなあと素直に思える作品でした。
じいちゃんがとにかく素敵だったなあ。
 
店のリニューアル後も話を続けようと思えばできそうなので、続編があったら嬉しいのだけれど。
でも千早さんはシリーズものとかないし、今までからするとそれはないかなあという気もします。
 
(4.5点)