重度の物忘れにより病院で検査を受けた玲子は、末期の脳腫瘍で余命1週間と宣告される。そして認知症のような状態になった玲子は、それまで話すことのなかった家族への本音をぶちまけ、長男・浩介、次男・俊平、夫・克明はうろたえてしまう。やがて経済破綻や家庭内不信など、ごく普通の家族に隠されていた問題が明るみに出てきて……。
監督:石井裕也
原作:早見和真「ぼくたちの家族」
元々観るつもりはありませんでした。
ただ、早見和真さんの原作は個人的にもなかなか印象に残っていて、あー早見さんの作品なんだなあというくらいの印象でした。
予告編を観た時にはそんなに期待をしていなくて、たまたまユーザーレビューを見ると4点以上と高評価。
5月までの映画のチケットを購入していたので、ならばちょっと見てみようかと観にいきました。
いやー、もうこのタイミングでこの内容は・・・泣かない訳がなかったです。
今年突然母が病院に搬送され、大手術をするという経験があり、生死に関わる手術と聞いている中、手術の予定時間を過ぎても一向に先生が出てこないという、ただ待つだけの不安というのが記憶に新しく・・・感情移入をし過ぎてしまいました。
父親はいないものの、家族の経済事情とか、バラバラになっている家族だとか・・・自分の境遇と似ている所が多すぎて・・・。
私の兄妹も、兄と妹があまり仲が良くありません。
しかし、母の入院をきっかけに、兄妹が団結し、距離を縮めることになったというリアルな体験をしているので、壊れかけていた家族の再生という今回のテーマ自体にもリアリティをもって感じられました。
引きこもり経験のある、冴えないけれど責任感の強い長男を演じる妻夫木君も、いつもの役のイメージとは全然違っていたものの、なかなか好演していました。
そして頼りない父親の長塚さんもいるいるこういうお父さん!という感じが出ていたし、最近注目の池松君の末っ子故の奔放さと実は凄く頼りになる弟役もはまっていました。
そして今回何より注目したいのは、原田さんです。
可愛らしい母親と、病気が原因で取り乱す姿のギャップ。
ほんわかしているようでいて、誰よりも「家族」を大事にする姿が本当にはまり役でした。
諦めずにギリギリまであがいて見る。
そうすれば、もしかしたら・・・こんな奇跡が起こるのかもしれません。
ありがちな難病モノの話になっていないところがいい。
「バラバラになった家族が病気になった母を助けるために奔走し、再生していく物語」
単純に言えばそういう映画です。
けれども、やっぱり家族っていいなあと、改めて家族の大切さに気付かせてくれる映画でした。
石井監督、「舟を編む」以降こういった路線で攻めてくるけれど、個人的には昔の「川の底からこんにちは」とかよりもこういうテイストの方が凄く合っている気がします。
思いがけない良作でした。
(4.5点)