私たちは、世界の割れる音を聞いてしまったーー。大地はまた咆哮をあげるのか? 震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、巨大地震が襲う。来るべき第二の激震におびえながら、大学キャンパスに暮らす学生たちは、カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。未来版「罪と罰」。
綿矢りささんの本です。
綿矢さん、最近の作品発表ペースの速さには脱帽。そして一作一作のクオリティの高さに、やはり才能ある作家さんなのだなあと実感します。
かつて大地震の話など、言わば「あったら怖い話」であり、「現実には起こる可能性はほぼない」他人事の話でありました。
しかし、実際に大地震を経験してから、震災の話を盛り込んだ小説はたくさん出てきました。
あるわけがないと思っていた大地震が起こり、小説を読んでいても空想ではなく、現実感を伴ってくるようになったのです。
大地震に見舞われた主人公たち。
大地震以外、大きな何かが起こるわけではありません。
しかし、大学というサークルの中で、リーダーとなるもの、震災の混乱で大きな事件の起こしてしまう加害者、その他の大衆。
特殊な状況の中で作られるカースト、人間模様を、淡々と描いていくさまがどこかぞっとするところがありました。
綿矢さんの、突き放すくらいに淡々と人物を描いているところが大変好み。
どういう話?と聞かれて答えるのが難しい小説でもありましたが、やっぱり才能あるよなーこの人、と実感した本作でした。
(4点)