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後悔と真実の色

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あの強固な呪縛から、いつか解き放たれたかった。若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人魔「指蒐集家」が社会を震撼させている。警察は、ネットでの殺人予告、殺害の実況中継など犯人の不気味なパフォーマンスに翻弄され、足がかりさえ見えない。その状況下、捜査一課のエース、西條輝司はある出来事を機に窮地に立たされていた―。これは罠なのか?被害者たちにつながりはあるのか?犯人の狙いは何か?緻密な構成で不器用に生きる男たちを活写する傑作長編。


貫井徳郎さんの本です。
 
第23回 2010年 山本周五郎賞受賞作品なんですね。
 
結論から言って、面白かったです。
3分の1程は、警察内部の派閥争いや縦割社会の独特の縄張り意識というか、醜いいがみ合いやなんかに思わず顔をしかめてしまったのですが(内部争いしてないで、協力しあったらもっと事件解決に繋がるんじゃないの?とか思ってしまって)、それを過ぎて連続殺人事件が動き出していくと同時にぐいぐい物語に引き込まれていきました。
 
特に、名探偵と揶揄されるほど推理が当たると一目置かれている西條が、とんだことからミスを犯し、警察を追われる立場になってから、苦しい展開が続きます。
 
珍しく途中で犯人が分かったのですが、何より一番悲しかったのが、好きで結婚した妻から、全く愛されていないと実感する妻の態度。
そこから逃げるように不倫相手の元に拠り所を見つけた西條には、最後の最後まで苦しい展開が続きます。
 
若くして出世した人間、出世を望むもなかなか叶わない人間、飄々としているようで実は周りをしっかり見ている人間、当たり障りなく人と付き合う事で深入りをしない人間――
 
色々なタイプの刑事が登場し、個人的には機捜の綿貫の息子の真っすぐさに救われた想いでした。
敵視する西條を陥れるきっかけを作ったのに、それを自分の棘として向き合っていく男。
案外、西條と仲良くなってそうな気もしたり。
 
ページ数もかなりある分厚い本だったので、読むのにかなり時間がかかりましたが、面白かったです。
(4.5点)