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ヒミズ

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どこにでもいる中学3年生の住田祐一の夢は、成長してごく当たり前のまっとうな大人になること。一方、同い年の茶沢景子の夢は、自分が愛する人と支え合いながら人生を歩んでいくことだった。しかしある日、2人の人生を狂わせる大事件が起き……。


監督・脚本:園子温
原作:古谷実


「俺はたまたまクズのメスとオスの間に生まれただけだ。だがな、俺はおめえらみたいなクズじゃないんだ。見てろ、俺の未来はだれにも変えられねえんだ」
 
<若干ネタバレ的な要素があるので注意!>
 
ヴェネチア国際映画祭で新人俳優賞を受賞した主演の二人がニュースで話題になった時、最近注目している染谷将太君が出演しているというのを知りました。
蒼井優主演の「たまたま」を観に行った時、予告を見てかなり重そうな内容だな、と思っていたのですが、とても気になっていてようやく見る事ができました。
 
まず、これだけは言いたい。
 
染谷将太、すごい!
 
この俳優、本当に凄いな、と改めて思わされました。
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」でもメインの役柄でしたが、脇役でも(ほんの少しのシーンしか出なくても)、彼がいるだけで凄い存在感で。
それが主役級となると、まあまあもう、目が離せませんでした。
 
借金を作って時々家に帰って来ては住田に暴力をふるい、金をせびるだけの父親、男を作って住田を捨てて家を出てしまう母親。
ろくでもない両親から生まれてきた住田は、「普通」の生活をただただ望んでいる。
 
被災地を舞台に作られた映画の中にも、勿論震災に絡んだ設定が多数出て来ます。
何処か絵空事を並べているようにしか聞こえない担任の先生に、飄々と答える住田。
本当に、染谷君は飄々とした演技が上手い。
聞いているのか聞いていないのか分からないような表情で、淡々と答えるみたいな。というか、そういう役が多い気もしますが(笑)
 
母親からも疎ましく思われ、父親からは「お前いらねえんだよ」と言われては暴力を振るわれる住田。
周囲には震災難民になった人間達がいるが、彼らも住田の事情に介入できないところもあり・・・。
 
そしてとうとう悲劇が起こる。
死ぬことも、自首することもできない住田は、学校にも行けず、包丁を持って町に繰り出す。
死ぬべき人間を殺すために――
 
住田が起こした事件後、絵具を顔に塗りたくり、泥や水塗れになりながら叫ぶシーンは、何処か「リリイシュシュのすべて」の星野を思い起こさせました。
そういえば、リリイも中学生が主人公だったもんね。
 
自分はただ普通の生活がしたいのに、不幸はどんどん住田に襲いかかって、死にたくても死ねなくて、どうしようもない絶望感を抱えている住田の表情。
染谷君は、見事に演じていました。


二階堂さんは……、この作品で初めて知ったのですが、上手いのか下手なのかよく分かりませんでした。
というのも、役柄的に難しい役どころだったので、KY女子中学生かと思いきや、家では両親に首つり台を作られる(!)ほど消えて欲しいと思われているという難しい設定。
 
普通に会話するシーンは、うざったいと思うくらい、住田にまとわりつき、はたかれても怒鳴られても懲りずに住田君、住田君と近づいていく、本当に空気の読めないキャラなのです。
うわーうざー!と思えるくらいだから、やっぱり演技が上手いというのかな?
やたら叫んでいるイメージでしたが、個人的には声もなく泣いているシーンに惹きつけられました。
 
また、脇役で特に印象に残ったのは渡辺哲さん。
何か私の中で、凄い印象にあるんですよね、何でだろう?
 
この人も住田のためにと思って行動したことで、色々ヤバい道を渡っているので、その方向でどんどん悪い展開にしようと思えばできたと思うんですよね。
 
ただ、全体的に見ると……想像していたよりは酷い展開ではなかったかなあと。
もう、これだけの設定があれば、どんどん不幸で暗くてどん底の話にできると思うんですよ。
例えば茶沢の家庭事情をもっと掘り下げていったら、自殺なんて展開もありえたかもしれませんし。
 
中学生という設定からか、性的な要素は一切なかったのが一番ほっとしました。
 
また、この映画は、震災後の人々の希望がほとんど排除されているように感じました。
「頑張ろう」「前向きに」「希望を持って」など、良い部分しか前に出さないようにしているように思う風潮の中、この映画は「震災特需」と言って、震災後にATMを荒らしたり流された車の部品を売りとばしたりして儲けたという街の不良や、自分の居場所が分からないと平気で無差別に人を切りつけたり、ろくでもない人間に限って震災後も生き残っているとか、『悪』や『負』の部分がこれでもか、と描かれていたように思います。
 
そんな中、最後はどうせ主人公のどっちかが死ぬんでしょ?
とか思っていた私には、最後のシーンの「頑張れ!」という言葉が、被災者の方々だけではない、全ての人に対しての言葉のように感じました。
 
頑張れなんて、頑張っている人に言ったら辛い言葉なんだから、と私はあまり好きではないのですが、どん底まで暗くて辛い事が続いた最後、一筋の光を見た気分でした。
 
原作は全く知らないのですが、原作と比べるとどうなんでしょうか?
ただ、個人的にはこの監督の撮り方も好ましく、BGMも自然だし、とにかく主演二人の演技が(特に染谷君が!)素晴らしいので、思っていた以上に満足しました。
 
凄くどうでも良い話なのですが、この映画に出演しているメイン女性のほぼ100%が巨乳の方だった気がするのは気のせいでしょうか???
二階堂ふみさんも、中学生の設定なんですが胸の谷間が・・・!
というか、胸が目立つ服ばかりだったから?
パンツ見えてたり、スカートめくれたり、体当たりの演技でしたねえ。
 
初めて見た時、宮崎あおいに顔が似ていると思ったのですが、シーンによっては似ているなあと思いつつ、やっぱり違いますね。当たり前ですが。
 
ニュースで出ていた主演の二人が、天然というか独特なキャラクターのようで非常に興味深いです。
二階堂ふみ染谷将太、今後売れていくのかな?
 
ともあれ、新年一発目、ガツンとやられた映画でした。
(4点)