No-music.No-life

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空に唄う

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私って、死んじゃったんですか?――新米の坊さん・海生の目の前に突然現れた、死んだはずの女子大生。誰にも見えない彼女と海生は同居することになるが!?


白岩玄さんの本です。
 
白岩さんと言えば、「野ブタ。をプロデュース」の作家さんですが、あれだけ有名な本であるにも関わらず、読む機会がないまま今に至ります。
文藝賞受賞作は好きなので好んで読む傾向があるのですが、人気だったせいか図書館になかなか置いていなかったり、タイミングが合わなくて読まずしまいだったのですが・・・・
 
●ャニーズの彼らが出演のドラマで名前だけが知れ渡り、イメージはあまり良くはなかったです。
デビュー作だし、結構微妙なんじゃない?
なんていうイメージが独り歩きしているような。
 
「バッテリー」の佐藤真紀子さんのイラストに惹かれ、手に取ってみた本作。
 
思っていた以上に、白岩さんは文章が上手くて、読み手を惹きこむ魅力のある物語を描く方でした。
 
今風に言ってしまえば、草食系男子の海生。
自分の意見を強く主張せず、何となく相手に気を遣ったり、合わせたりすることが普通になっている彼は、
ある日お通夜の会場で、死んだはずの当人の姿を見る。
 
幻覚なのか?
そう思い、死んだはずの女の子から声を掛けられても逃げまくっていたのだが、いつしかその現実を受け入れ、少しずつ時間を共にするようになる。
 
海生の声だけしか聞こえない、海生から受け取った物にしか触れない、女の子を生の世界に繋ぐただ一人のパイプ役が海生であり、海生にだけは触れて温かさを感じる事ができるのだという。
 
自分以外には見えない女の子。
いつしかその存在は大きくなっていくのだが――


こういう話、ごろごろしてますけど・・・
 
でも、他の人の声や音が聞こえないっていうのは初めてかもしれませんね。
海生を通して実際の物に触れたり動かす事ができても、別の人間から見たらあり得ない出来事であり、それがまた悲しい。
 
ありがちな展開(幽霊と恋愛)になりそうで、寸でのところでその展開にならず、最後まで敢えてはっきりとしない展開は、この物語全体を通すと映えていました。
 
何だか少し切ないのに、それでも前向きな終わり方だったのが救いでした。
 
男性作家さんなのに(しかも写真を見ると結構好みだ・笑)、男の子の書き方が凄く柔らかくて好きな感じです。
デビュー作で売れちゃうと、後後が大変かと思いますが・・・・今後にも期待します!