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幻肢

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医大生・糸永遥は交通事故で大怪我をし、一過性全健忘により記憶を失った。治療の結果、記憶は回復していくが、事故当時の状況だけがどうしても思い出せない。不安と焦燥で鬱病を発症し自殺未遂を起こした遥は、治療のためTMSを受けるが、治療直後から恋人・雅人の幻を見るようになり…。

島田荘司さんの本です。
 
映画化されているようです。
しかも谷村美月だからなかなか期待できそう、と思ったら、ほぼ公開終了していました。
 
ラブミステリーと銘打たれているようで、事故で大怪我をし、記憶を失った女子大生が、とある治療を受けることにより、「死んだ」はずの恋人の姿を見る事ができるようになるという話。
ひとくくりに言ってしまうとですが。
 
島田さんらしく、記憶喪失になって思い出す断片の記憶に慄く細部など、御手洗潔シリーズの「異邦の騎士」を彷彿とさせる部分があります。
女子大生が主軸なので、島田さんがよく描く子供っぽい女の子なんですけれど・・・少しずつ取り戻していく記憶と共に、事件の真相が見えてくるまで気になって引き込まれます。
 
映画版とは男女が逆になっている、というのもあって、実は遥が死んでいて、雅人が生きているパターンだろうか?と想像していたのですが、また違った展開でこれはこれで驚きました。
 
でもなあ・・・簡単に許せるものですかね。ラストにどうにもしっくりこなかったのですが・・・。
 
幻肢という脳が見せる不思議な体験。
 
例えばこれで死んだ人間の存在を感じられたり、触れる事ができたり、言葉を交わす事ができたとしたら・・・
どうなんだろう、残された人間はそれで幸せなのだろうか。
死んだ人をいつまでも忘れられない人に、まして大学生なんて若い子が、例え死んでいると分かっていても存在を感じられることでこのままでいいと遥のように思ってしまうことは、果たしていいことなのだろうか・・・。
 
様々な事を考えさせられました。
 
結果的にラストはそういった心配は無縁ではあったのですがね。
 
それにしても、島田氏が「ケーキもプリンも」と描いていることに意外性を感じて微笑ましかったです(笑)
(4点)