御木元玲は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる…。あきらめ、孤独、嫉妬…見えない未来に惑う少女たちの願いが重なりあったとき、希望の調べが高らかに奏でられる―いま最も注目すべき作家が鮮烈に描く、青春小説の記念碑。
宮下奈都さんの本です。
こんなに素晴らしい読後感を残してくれる本なのに!
いや・・・本当に素晴らしかったです。
私は、女子高生が大嫌いなのですが(一部のうるさい女子高生が特に)、何故か小説の世界の高校生は眩しくて憧れてしまう。
自分の高校時代がかなり底辺で暗い日々だったせいもあると思うのだけど、私もこんな風にキラキラ輝く青春を過ごせたら良かったのに・・・という思いがあるからなのかもしれない。
この作品は、母親に著名な音楽家を持つ一人の少女が軸になり、「歌うこと」という事がもたらす様々な感情や出来事を、それぞれ別のクラスメイトの視点で綴られていく物語だ。
そんな中、合唱コンクールで指揮者をする事になってしまった玲。
本物のピアノを買ってもらえず、実家のうどん屋を手伝う女の子。
ソフトボールの4番選手から転落し、高校生活を「余生」だと思いながら日々を過ごす女の子。
霊感があり、人には見えない者の姿が見えてしまう女の子。
春の気配を恐れる女の子――
ソフトボールの4番選手から転落し、高校生活を「余生」だと思いながら日々を過ごす女の子。
霊感があり、人には見えない者の姿が見えてしまう女の子。
春の気配を恐れる女の子――
クラスメイトの女の子達の、それぞれの視点で描かれる物語は・・・同じ出来事のはずなのにどれもまるで別の出来事のように鮮やかです。
私は最近、春の気配を少し懐かしく、そしてちょっと怖いような気持ちで思い出す事が多いのですが、そんな春を怖い(という表現が正しいのか不明だけど)と思う女の子の話があって、「そうそう!その感覚!」って思いながら読んでいました。
そして、私も高校時代は駅までどんなに荒天でも雨の日も風の日も雪の日も、マイチャリで必死に通学していたクチなので、校門前まで車で送り迎えをしてもらっている友達を見ると、「けっ!」という気持ちになっていたものです。
今も徒歩で通勤しているので、雨が降る(降ってなくたって)と、平気で親の車で乗り付けてくる高校生を見ると、「車で送り迎えしてもらわなくちゃいけない高校なんて、通うなよ!」なんてイライラしてしまうひねくれものです。
今も徒歩で通勤しているので、雨が降る(降ってなくたって)と、平気で親の車で乗り付けてくる高校生を見ると、「車で送り迎えしてもらわなくちゃいけない高校なんて、通うなよ!」なんてイライラしてしまうひねくれものです。
そういうのを含めて、もう10年以上も前の事なのに、何故か懐かしいような気持ちになりました。
思いがけず、とても良い本に出会う事が出来ました!