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船に乗れ!III 合奏協奏曲

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最終学年になった津島、鮎川、伊藤らのアンサンブル。伊藤は津島に言った。「僕たちはこれからの方が大変だ。甘くない」。それぞれの心がぶつかり合い、再びふれ合った果てに訪れる、感涙の最終楽章――。

エンターテイメント性と奥深さを兼ね備え、各紙誌で熱狂をもって紹介された青春音楽小説三部作が、ここに堂々完結! 胸に沁みるフィナーレは、人生を変える、かもしれない。




藤谷治さんの本です。

船に乗れ!の完結編。

ああ・・・凄く良かった。
本当に良い本に巡り合えたと思いました。


私は割と時間を空けずに、1、2、3巻と読む事が出来たのでラッキーだったのかもしれません。

1巻では少し読みにくいかな、なんて思っていたけど、後半からぐいぐい惹きこまれて。
2巻ではもう、泣きそうになりながら読んでいました。
そして最終巻の今作です。

このシリーズを読んでいると、胸がしめつけられるようになるのは何でだろう。

そう思って振り返ってみると、この主人公のサトルが大人になった今から過去を振り返っているという所が大きいのではないかと思いました。

10代、特に高校生の頃というのは、自分には無限の可能性があるのではないかと錯覚します。
無限は「夢幻」なのかもしれないのに。

その時の自分はまだ未完成の状態であり、これから変化して、いつか大きくなれると、何故か無条件に信じる事が出来るくらいには自分の意思がしっかりとあって、そして若いのです。


この主人公のサトルは、同級生が読まないような本を読んでその知識をひけらかし、そして自分自身がチェロを弾きこなしていると思っている自信過剰な高校生です。

そんなサトルが音楽科のある学校に入学し、音楽を志す仲間に出会い、恋をして裏切られ、挫折をし、決して忘れる事が出来ない卑怯な事をしてしまい、そして自分にはこれしかなかったと思っていた「音楽」と向き合った時に、大きな決断をする事になるのですが(今回はそれが大きなテーマでしたかね)、

何なんでしょうね。
泣きそうになるんです。

サトル自身が、過去を振り返りながら「この時はこうだったけど、今になってはこう思う」と割と淡々と語っているのもそうなんですけど、大人になったからこそ分かる痛みや苦しみってありますよね?
「大人」と自他ともに認める年齢になって、それでも思い出すのが苦しい過去を、振り返る形だからでしょうか。

大人にこそ、読んでほしい

そんな本です。
多分、泣いちゃう人もいるんじゃないかな。

特に、サトルが好きになった女の子・南との関係があまりにも切ないです。


よくある青春群像劇なんかじゃない。
音楽に励む高校生の、ただの物語なんかじゃない。

そんな単純な言葉では言い尽くせない物語なんです。

うまく言えないのですが、とにかく読め!


思いがけず良作に出会えました。
今年読んだ本の中で、上位に入る作品だと思います。