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待ってる 橘屋草紙

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何かを待たずにいられないのが、人の世のならい。では、おふくが「待ってる」ものは-?12歳の春、貧しい少女・おふくは、江戸・深川にある料理茶屋『橘屋』で奉公を始めた。美しく気丈な仲居頭のお多代は、おふくを厳しく躾ける。優しくも、温かくもない言葉の裏にある“何か”に気づいたおふくは、涙を堪えながらもお多代の下でたくましく成長していく。あさのあつこが少女の成長と人の絆を描く、涙あふれる連作短編集。

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あさのあつこさんの本です。

今作は時代小説で、料理茶屋「橘屋」に関わった奉公人達などのそれぞれの物語が短編として収録されています。
一つ一つに繋がりがあり、そういった意味でもとても読みやすかったのですが…何より、読後の余韻がとても良かったです。
決してハッピーエンドではありませんが、悲壮感はありません。小さな小さな希望ではあるかもしれませんが、そんな予感に満ち溢れた話が印象的でした。
あさのさんの時代小説も色々読んできましたが、腕を上げたな、という印象を受けました。
むしろ短編の方が向いているのかも?

宮部みゆきさんの描く時代小説も味があって好きですが、私個人としてはこの本をオススメしたいですね。


江戸時代の、決して裕福でない庶民達の生活は、厳しく辛いものだったのでしょう。
12、3歳で奉公に出て、一家を支えるという使命。
貧しいうえに早死にする親。明日の食べるものすら覚束ない毎日――

今の時代では到底考えられない時代が、確かに存在していたことをしみじみと感じさせられました。

間違いなく、良作。
読んで絶対に損はしない一冊でした。