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月曜の朝、ぼくたちは

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大学のゼミ仲間7人が、30歳を目前にして再会を果たした。しかし、再会は楽しいものではなく、それぞれ人生の転機に苦しむ姿を目の当たりにするだけだった。胸をしめつける青春小説、堂々デビュー。

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井伏洋介さんの本です。

書店で見かけて装丁とタイトルで気になっていました。
早速図書館で予約して読みました。

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想像以上に、良かったです。

え? 私、まだ一応20代前半だよね?
なのに何で? 何でこんなに感情移入して読んじゃってるの?!

と自分で不思議に思った位、物語の世界に引き込まれていました。


皆さんは、子供の頃想像していた未来と、今の自分の現実が描いた通りのものでしたか?

○○になりたい、○歳で結婚したい、きっと幸せな未来が・・

色々な想像をしていたと思います。

私はというと、小学校の卒業文集で結婚予想年齢が20歳と書いているんです。

12歳かそこらの子供だった私には、20歳なんて想像も出来ない遠い未来のことだったんですよね。
実際は、20歳になっても中身は何も変わらない子供のままだったし、結婚なんて全くありえなかったんですけどね。

思い描いていた未来の通りになった人は、きっと相当少ないでしょう。
ほとんどが「こんなはずじゃなかった」「こうなって欲しかった」と嘆いているのではないか?と思います。

そんな思いが、この物語と重なってしまったのかもしれません。

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大学生時代、ゼミの仲間としてつるんでいた男女

人材派遣会社の営業成績を上げられず、降格させられそうになっている正樹。
務めていた会社で、理不尽な人事異動を強いられた栞。
企業家になると豪語しながら、その日暮らしのバイト生活をしている亀田。
癌に侵され、人生を終えようとしている来生。
地元に戻り、平穏だけれど順調な生活を送っている野原。
出身大学コンプレックスを退け、努力を続けて地位を確立してきた北沢。
自分の店を立ち上げ、これから明るい未来があると信じて疑わない八木。

それぞれの人物にスポットを当て、辛い現実と少しの明るい未来を見せながら結末に向かう展開はとても好感を持てた。

学生時代の仲間に「格好悪い所を見せたくない」と見栄を張って仕事が順調だと言う人間や、羨望の眼差しで見つめられたいと思う人間や、こんな自分でもこれから明るい未来が待っているのだと根拠もなしに願うものや・・

現実の厳しさ、しかも30歳前後の、世間的には大人であるとされる男女の姿がリアルに描かれているのが興味深い。

人生というのは、一度悪い事が起こると立て続けにそういう事が起こったりもする。
けれど、ずっとどん底という訳では決して無い。

目の前の現実から逃げずに、それでも立ち向かっていける人間にはきっと明るい未来が(ささやかだけれど)待っているのだ、と思わせるラストに心が温かくなった。


来生の最後の手紙の言葉が、胸に響きました。

「おとなになれよ」

私は、おとなになれるだろうか? 

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井伏さんはこの作品が書き下ろしデビュー作らしいです。
デビュー作でこれだけのものを書けるなんて、相当凄いです。注目の作家さんであります。