No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

少女七竈と七人の可愛そうな大人

イメージ 1

半身を奪われるような別れ、あきらめていた人への想い、痛みをやさしさが包み込む。気鋭、桜庭一樹が描き出す、最高の恋愛小説-

---

桜庭一樹さんの本です。

るいさんにお薦めされ、早速図書館で借りて読みました。

実は装丁が綺麗だったので、とても気になっていたのです。

七竈って、何だろうと思っていたのです。
何かの言葉なのか?って。

植物らしいです。
で、主人公の女の子も同じ名前です。


---

わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。

いんらんな母が、誰とも知れない男との間に身ごもった子供、それが紛れもなく美しい娘七竈であった。

その美しさ故、また母の悪い噂が絶えない小さな街で暮らす故に、常に好奇の目にさらされてきた。

美しいということは、異端でもあり、良くも悪くも目だってしまうのだ。

そんな同じ境遇を抱えている雪風もまた、美しく生まれてしまったが故、異端であった。

二人は、幼馴染として、また鉄道マニアとして唯一心を通わせている。

だがしかし・・お互い口に出すことはないが、お互いがあまりにも美しいこと、またその美しさが同系のものであることに薄々気付き始めていた。

親戚の結婚式。
七竈の親類と、雪風の親類の中で、雪風の父、雪風の末の妹、七竈、雪風だけが同じ顔立ちをしていること。

また、末の妹と七竈が姉妹に間違われたこと。

・・それは偶然ではなく、全ていんらんな母のせいであった。
この悲しい運命は。

---

大学進学を控え、地元の大学に進学するという雪風と、ここにいつづけることは出来ないと悟った七竈は、東京の大学へと進学することになった。

ついに、二人は離れてしまうのだ。

そして、母に長かった黒髪をバッサリ切ってもらい、男の子のように短くなった髪・・その姿は、紛れもなく雪風そのものであった。


いんらんで、七竈を産んでもなお、自分の求める道を進み続けて旅に出ては家に戻らない母。
母を憎み、運命をのろいながら・・・それでも母の愛情に飢えている事がちょっとずつわかってきて・・それだけでも切ないのに、唯一の心の支えのような雪風との非情な運命-


何だか読後、ぴりっと辛いみたいな、ひりっとするような痛さが襲いました。

---

しかし、この七人の大人っていうのは誰を指すんだろう?

母の7人の相手の事なのか。
それとも七竈を取り巻く大人達のことなのか?

結局母は何を見つけたかったのだろう?
また、やはり七竈の父親は雪風の父と同一人物なのでしょうか?

核心に触れそうで触れない語り口にもどかしさが。

だけど、昭和ノスタルジーが大好きな私にとっては、この昭和とも大正とも言われぬイカな世界はとても好感がもてました。


美しくも極端に不細工にも生まれなかった普通の私には、到底七竈のような気持ちは分かりませんが、美しいなりに大変なんだなあ・・と思ったりしました。