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カンタ

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携帯ゲーム会社「ロケットパーク」を設立し一躍時代の寵児となった耀司。さらなる事業の拡大を目指して企業買収にのりだしたが、マネーゲームに翻弄され命を狙われることになる。いまこそ亡き母との約束を守るときだ。親友・耀司を守るため、カンタはある決意のもと沖縄へ旅立つ。


石田衣良さんの本です。
 
少し前に発売されていたのに、タイミングを逃して読んでいなかったものでした。
 
お互いに父親がいない家庭に育った耀司とカンタ。
裕福だけれど水商売で働く母親に育てられた耀司は、母親がいない一人の夜が寂しくて仕方がなかった。
パートで生計を立て、体の弱い母親に愛されて育てられたカンタは「発達障害」を持っている。
 
幼い頃、運命的に出会った二人は大人になり、会社を設立し、どんどん急成長を遂げていく――
 
前半が特に良いです。
発達障害」が障害とみなされていなかった時代。
興味のある事には秀でて集中力を持続させることができるのに、苦手なこと、興味のない事には一切関心を持つことができない。人の気持ちや空気が読めずに人を恐れるカンタと、優秀故カンタの事を一番に理解しずっと傍で支えていた耀司。
 
そう、最初は確かに耀司が支えていたのだと思います。
けれど、いつしか大人になり会社を設立して巨額の富を手に入れてからの耀司は、何処かで恐怖を覚えていたのではないでしょうか?
そこに幼い頃から変わらず真っすぐなカンタという存在がいること。
相当救われていたのだろうな。
 
後半は○リエモン騒動の、ほぼ、まんまの展開が続くので少し現実に戻ってしまった感じはありますが、とにかくカンタに救われる思いでした。
 
優秀で22歳にして会社社長で巨額の富を手にした耀司は、何もかもを持っているような気もするけど、子供のころから実はずっと孤独だったのかもしれない。
人の心を読めず、人とは違っていても、耀司を100%信頼し、ずっと傍にいることで幸せを十分感じているカンタは、贅沢も欲もほとんどない。
ここまで信頼できる関係になれる相手なんて、一生のうちに一人も出会えないかもしれない。
 
そう言った意味で、二人の関係がうらやましく思えたほど。
 
何だかんだと上手くいってしまったり、実際は障害を認めてもらえない事の弊害はもっとあるだろうし、母親がもう少し堕落して子供の金に手を出したりとか、裏金の件で命を狙われる件についても、もうちょっと深く描いてくれても良かったかなあ、と思ったりします。
色々あっても案外順調に終わってしまったので。
 
けれども、最近の石田作品には満足できていなかっただけに、本作は久しぶりに感動を覚えた作品でした。
何気に「4TEEN」や「池袋ウエストゲートパーク」と思われる描写とそれを皮肉っている自虐的な文章も面白かったです。
(4.5点)