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妖怪アパートの幽雅な日常⑧

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運命に翻弄されながらも立ち向かう夕士。若いうちの遠回りは心を豊かにしてくれると思った夕士は、就職活動をやめて大学進学をめざす。一方、魔道士としても生きる覚悟を試されるような事件が―




香月日輪さんの「妖怪アパート」シリーズ第8弾。

今回は、思わずハッとさせられてしまいました。


妖怪アパートには個性豊かな大人の人間や妖怪達がいるけれど、そこで夕士は沢山の事を学ぶことが出来る環境にいるんですよね。

詩人の言葉、


「自分の悲運や不幸を嘆くばっかりの者のところへは、幸福なんて絶対にやってこない。それはなぜか? 本人が不幸のフィルターでまわりを見ているからサ」


不幸のフィルターで周囲を見ていることにより、世の中は歪んで見える。
そして、周囲の普通が自分より恵まれているように見える・・・

そして不幸な自分を見下しているように見え、拒絶する――

受け入れるのは、自分と同じ人間だけ。
ぞこで苦しんでるのは自分だけではないと目覚める人間とそうでない人間が出てくる。

その分かれ目で目が覚めなかった人は、更に深みにはまってしまう。


悲しくて、惨めで哀しいままでいることが、実は一番楽ちんで。
そのくせ自分達が他人から見下されていると言いながら、実は自分達が相手を見下しているのだ――


詩人の言葉が、とてもとても私にとっては刺さりました。
だって、まんまこれ、私の事ですやん。


夕士は両親を失って孤独な身の上になって、誰にも頼れないし打ち解ける事も出来ずに殻にこもりきりになっていた。だけどそれを理解して受け止めてくれる長谷の存在や、アパートの住人達との交流で少しずつ気持ちが変化していっている。
とても前向きに。


私は人より苦労してきたし、今もしていると思う。
だから「普通」の立場にいる皆がとてもうらやましくてたまらない。

自分より苦労なんてしてないくせに、大変じゃないくせに!
いつも、いつだってそう思って生きている。

そしてそんな風に自分が可愛そうなやつって思う事は・・実はとても楽で。
逃げだって分かってる。だけどいつからか、いつの間にかこんな風に考えるようになってしまった。

周囲の人間に壁を作っているのは、私自身だよな。
本当に思うけど、ちょっと話をしただけでこんな風に比べられたり非難されたりしたら、そりゃ人も私から離れていくわ。

負の要素は、負の連鎖ばかりを生むね。
何だかハッとさせられた今作でした。




今回はついに千晶に夕士の秘密がばれてしまう出来ごとに遭遇してしまうのですが・・・
今更何を怖気づいているんだい?なんて思っちゃったのは、このアパートの住人達にすっかり免疫がついてしまったせいなのでしょう。

実際に突然魔導書を取りだして、訳のわからない生き物が飛び出してきたら引くより何より、怖いもんね(笑)