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ぽろぽろドール

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これが運命の「ひと」。美しく官能的で残酷なまでの思いを人形に託した人たちの、切なくもまっすぐな物語。「男の子のわからないのだ、わたしがいつもどんなに悔しかったか。」かすみの秘密は死んだおばさまからもらった、頬をぴしりと打つとぽろんと涙をこぼす等身大の男の子の人形。男子にいたずらされたり、教師にセクハラされると、家に帰って彼の頬を打つのだ。中学3年になり、初めて彼氏ができたけど、彼はかすみに涙を見せてくれなかった-

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豊島ミホさんの最新作。

前回の神田川デイズとは、全く赴きの違う一作となっています。
まず、装丁が綺麗です。

その時点で、人形愛という怪しげなテーマの今作も抵抗なく読むことが出来ました。

若干、それは怖い・・という変態まがいの短編もあったりするのですが、どうしてか読後感が切なくてこれが豊島さんなんだなあと改めて思ったりしました。

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ぽろぽろドール
手のひらの中のやわらかな星
めざめる五月
サナギのままで
きみのいない夜には
僕が人形と眠るまで

お薦めの解説でも。

手のひらの中のやわらかな星

小中と分校という場所で生活していた咲子は、自分の容姿について考えたことなどなかった。

過疎の山村から、街の高校に出てきた咲子が驚いたのは女の子たちのきれいさだった。
顔の輪郭から飛び出そうなほどレンズの大きなメガネをかけ、重苦しいまぶたをし、下唇がつきだした顔・・
そう、自分はブスだったのだ。

高校に入学し、教室に入って目に付いたのはとても綺麗な女の子、冬馬かおりだった。
冬馬さんと友達になりたい!
そう思い、彼女の元へ近づこうとしてクラスメイトが自分に一瞥をくれ、瞬時に目線をそらされた・・

そう、咲子は拒絶されたのだった。

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絶望した咲子だったが、部屋の中で去年何気なく父にもらったお人形を引っ張り出した。

「どっかで見た?」

その茶色く長い髪、くるくるの睫毛。
それは、教室でみた冬馬さんに似ていた。

それからのめりこむように、人形の服を作り始めた咲子。
次は何を着せようか?
何を着せたら似合うだろうか?

そんな事を考えながらも、絶対にこの人形や冬馬さんのようにはなれない自分に悲しくなる。

そんな中、学祭の季節が近づき咲子のクラスは劇をやることになった。


咲子は、咄嗟に衣装係に立候補して-

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お人形のように可愛い冬馬との接点は、自分が得意とする衣装係をやることでしかきっと一生チャンスは巡ってこないと強く思った咲子。

最後は、「よく頑張ったね、咲子」と思ってしまうような終わりかたです。

でも、外見で拒絶されるのって・・痛いですね。


きみのいない夜には


彼氏と同棲中の佑子には、ただ一つだけ譲れないものがある。

それは、licoシリーズという可愛らしいお人形だ。
運命を求めて、お人形を買ってしまう佑子に、彼氏の拓ちゃんは「怖い」と言うけれど、それでもまた新たに運命を感じて、オークションで一体のお人形を買ってしまった。

そのお人形が家に送られてきて、ふと何かが入っているのを見つけた。

落札ありがとうございました。-よろしければ、付属の手紙を彼女に渡してもらえないでしょうか?


そんな文字を読み、軽く寒気がしながらもタテニセンチ、横三センチくらいの封筒に沙羅子へと書かれたミニチュアの手紙が入っていたのだ。

試しに人形にその手紙を持たせてみると、不快感どころか手紙を手にした沙羅子の目に、光が宿ったかのように見えた。

それから、何度か佑子宛の手紙と沙羅子宛ての手紙が送られてくる。

佑子には、同じように沙羅子に手紙を渡して欲しいという内容と、小さな封筒が入っているのだった。


好奇心に負け、沙羅子の封筒をあけてみると、そこにはきちんとした手紙が入っていた。

君のいない夜には、僕はからっぽだ

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佑子は、運命を求めていた。

だからこそ拓ちゃんが大学に残り、助手になることを決めたことを聞き、更に拓ちゃんはこんなことを言う。

「このまま佑子をひとりにしてたら、佑子が人形になるんじゃないかって、思った」


そこで、佑子は拓ちゃんを激しく好きでいた訳ではないことに気付いてしまう。

そんな時、マンションの近くで人影に気付く。

その人は、沙羅子を売った山本さんという人に、間違いなかった-

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このlicoシリーズというお人形は、「きみのいない夜には」でも出てくるもので人形の中でも唯一可愛らしい人形の部類になると思います。

等身大の涙を流す人形とか、マネキンとか、フィギュアとか・・
他は結構リアルだったり怖かったり、オタクっぽかったりもするので。

さらりと読めたのはこの2つですかね。

最後の僕が人形と眠るまでも何だか少し切なかったですけど。

人形愛だといって、敬遠することなかれ。

一度読んでみてください。