No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

孤笛のかなた

イメージ 1
 
 
小夜は12歳。人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を亡き母から受け継いだ。ある日の夕暮れ、犬に追われる子狐を助けたが、狐はこの世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火だった。隣り合う二つの国の争いに巻き込まれ、呪いを避けて森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸をめぐり、小夜と野火の、孤独でけなげな愛が燃え上がる……愛のために身を捨てたとき、もう恐ろしいものは何もない。

上橋菜穂子さんの本です。
 
「守り人」「獣の奏者」シリーズを読んで来て、最後にこの本を。
 
もしかしたら私、一番この作品が好きかもしれません。
なんというか、好みだったというような。
 
日本の、平安時代なのか戦国時代なのか、その中間くらいでしょうか。
民は年貢を納めて暮らし、その民達をまとめる王的な存在がいるような。
着物を着て生活し、馬が足。普通に生きる分には命の危険はないが、物語の主人公達は普通に生きられない。確実に運命の歯車に狂わされ、戦やら危険に巻き込まれていく訳です。
 
何を言いたいのか良く分かりませんが、まず時代?設定が好みでした。
 
幼い頃に母親を亡くした小夜が、ある日傷付いた狐を助けたことから物語は始まります。
 
森の奥にあるお屋敷に閉じ込められている小春丸が、逃げてきた小夜を助け、小夜とのつかの間の楽しい時間を過ごす日々が訪れます。
悲しいけれど、ふっと心が和む瞬間というのは、この作品でここだけかもしれません。
 
まず冒頭から狐=霊狐の野火の視点から始まるのですが、人間に支配されて身動きの取れない苦しい立場です。
そして小春丸の存在とどういう人物なのかが時が経つにつれて明らかになりますが、これもまた悲しい。。
 
そして主人公の小夜は、孤独ではあるが穏やかな日常から、母親の過去を知り、踏み入れてしまった真実はただただ苦しいものです。
 
ラストはハッピーエンドなのか、それとも・・・といった賛否両論なものではありますが、例えこうなることが分かっていても、愛した相手と幸せに過ごす事ができる日々が手に入ったのならば、これで良かったのですかね。
 
最初から最後まで終わりの予感に満ちた、悲しいけれど美しい物語でした。
 
上橋さん、本当凄いです。。
深い余韻の残る物語でした。
 
(4.5点)