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一度聴いたらもう虜-フジファブリック

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   夕暮れの路面電車 人気はないのに座らないで外見てた
   暇つぶしに 駅前の 花屋さんの娘にちょっと恋をした

私が彼らの存在を初めて知ったのはいつだっただろう。
あの時の私は彼らについてあまり興味を持ちはしなかった、という事だけは覚えているのだが。

タワーレコード新宿店の一角に「フジファブリック/アラモード」というコーナーが設置されていた。
共に訪れた友人に勧められるがまま試聴をし、初めて聞いた彼らの曲がこの『花屋の娘』だった。

その当時の感想としては「いいかもしれない」程度のもの。
だけど、まさか後々・・こんなにも彼らの音の虜になるとは誰が予想したであろうか。
しかしそれは、じわりじわりと訪れていた。

フジファブリックがメジャーデビュー前に発売したインディーズ盤の集大成とも言える「アラモルト」。
発売記念イベントとして行われたタワーレコード新宿店でのインストアライブ。
その時初めて彼らの生音に触れた。
しかしその時も特にCDを購入しようだとかいう気にはまだなっていなかった。

後に考えれば大馬鹿だったと言えよう。
このCDを購入した人にはメンバーとの握手・サイン会が待っていたし、この「アラモルト」は限定生産で、既に完売してしまったというのだから。

名前だけは知っているものの、CD購入には至らないまま・・友人に焼いてもらったCD-Rで特に聴くCDもなかったので聴いていた「アラモルト
毎日毎日、聴いていた。

そして気付いた時には、彼らの音の虜になっていたのである。

嘘だと思うなら、一度彼らの音を聴いてほしい。
彼らには、他のどのバンドにもない独特の音がある。
詩の世界はとても不思議だ。

  飛び出せレディーゴーで 踊ろうぜ だまらっしゃい
  
最新アルバム「フジファブリック」の一曲目『TAIFU』に見るように時に意味の分からないような言葉があったと思えば、
 
  きっと今では無くなったものもたくさんあるだろう
  きっとそれでもあの人は変わらず過ごしているだろう
  
  またそうこうしているうち次から次へと浮かんだ
  出来事が胸を締めつける

アルバムにも収録されているシングル曲『陽炎』に見る、繊細な言葉。

それでもその詩に一度音を乗せてしまえば、不思議なことに違和感がない。
驚くほどにそれはフジファブリックというバンドの「音」になっているのである。

多分、何より彼らの虜になった原因はCDをリリースする度、彼らの演奏のクオリティが上がっている事が分かるからではないだろうか?

アラカルト→アラモード→アラモルトと順番に聴いていってもらえばその差は歴然だ。
特にアラモルトの中に収録されている曲は、以前に音源として発売している曲を再録音したものだそうなので、よく分かってもらえると思う。

『花屋の娘』がいい。
「アラモード」収録時ではいいかもという程度だった気持ちは、完全に無くなった。
今度はそれ以上に、感動すら覚えていた。
まず冒頭のキーボードで、聴いているものの興味を惹く。
そしてドラム・ベース・ギターが続き・・前奏の時点で一気に気持ちが高まっていく。

最後にボーカル。(冒頭に連ねた歌詞がそうだ)
ここで完全に持って行かれる。
爽快な程、波のように突然やってくるフジファブリックの音。
一度聴いたらもう逃げられない。
どうしてこんなに心地よく、ドキドキさせてくれるんだ。

しかしこの歌、よく聴いていると分かると思うが、主人公の妄想の中の物語なのだ(と思われる)
手元にCDを持っていないので、耳で聞いた限りに表した歌詞だ。
若干の誤記は多めに見て戴きたい。

  その娘の名前をすみれと名付けました
  
  妄想が更に膨らんで 二人でちょっと公園に行ってみたんです
  かくれんぼ とおせんぼ ブランコに乗ったり 追いかけっこしたりして

  何処に行きましょうか と僕を見る その目が眩しくて
  そのうち消えてしまった そう あの娘は 野に咲く花のよう

一歩間違えれば、ただの変態とも思える物語である。
しかし、そうは聞こえない。
一度聴いただけでは、爽やかな恋の物語とでも思える程、素晴らしいのである。

それはボーカル志村氏独特の声や歌い方からなのだろうか。
確かに彼の声や歌い方はとても独特で、誰かに似ているとは形容しがたい。

しかしボーカルだけなのか。
いや違う。
このバンドの音を聴き、特に印象に残るのが、キーボードの音だろう。
キーボーディスト・金澤氏の演奏力もさることながら、各曲ごとに使い分けられているキーボードの音色には圧巻だ。
それと同時に、バンド全体のサウンドの素晴らしさ。
彼らの曲が歌よりも演奏する時間のが全体的に長い(気がする)のは、彼らが何よりも演奏が好きであり、歌だけではない・・演奏でも何かを伝えようという意思が見えてくるかのような。
そんな意図があるのかないのかは分からないのだけれども。

更に彼らのサウンドは、どこか懐かしさが漂うような不思議な浮遊感に満ちている。
他のどのバンドにもない、新しい風とでも言おうか。
対比できるようなバンドなどいない。
彼らは彼らの「新しい音」を創り出したのだ。

  どうにもならない事が多すぎる どうでもいいことならいいのに

同じく「アラモルト」「アラモード」にも収録されている『笑ってサヨナラ』の歌詞には、はっとさせられる。
時々見せる、驚くほど鋭い言葉。
私達が気付いてはいても、無意識に考えないようにしているような・・そんな事をこうもさりげなく音に乗せてしまう。
それはもう、彼らにしか出来ない技なのではないか。

そしてまた私は、彼らの魅力にどっぷりとはまってしまうのである。

6月1日に待望のニューシングル「虹」が発売される。
まだ少ししか聴いていないが、今までの彼らのサウンドとはまた違った感じの曲のようだ。
こちらも楽しみ。

これからも進化し続けていくであろうフジファブリックから、もう目が離せない。
そうだ、一度聴いたら逃げられやしない。
いや、逃げたくない。

この記事で興味を持った方がいれば(それは怪しい)一度聴いてみて欲しい。
・・気付けばきっと、あなたもフジファブリックの虜になっているのでありましょう。