鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に二泊三日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、十年以上探しても見つからない稀覯本『三月は深き紅の淵を』の話。たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー
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恩田陸さんの本です。
ゆうきさんがお薦めしてくれた本で、でも文庫なのにも関わらず分厚いんです。
読み終わらないかもしれない、とちょっと敬遠していました。
でも、今日までに図書館に返さねばならないので、この前読み始めたんですが・・・。
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四編からなる物語。
幻の名作(迷作?)『三月は深き紅の淵を』という本を巡る四つの物語。
第一章:待っている人々
内容が、冒頭の紹介文にあるものです。
最初、あまりに会長たちが話をするもんだから、台詞が多くて読むのが大変で大変で(笑)
しかも、年寄りとは言えど、本を読みつくしているミステリ好きの大層な方たち。
難しかった、けど。
この習慣(ゲストを呼んで、本を探し当ててもらうという)は、いつまで続くんだろう。
でも、あの会長のことだから、死ぬまで続ける気なんだろうな・・
と思ったりしました。
第二章:出雲夜想曲
『三月は紅の淵を』の、作者は不明だ。
しかし、主人公の堂垣隆子は、とある想いを胸に江藤朱音と共に出雲へと向かう。
編集者をする傍ら、この本を巡る謎を少しずつつきとめていた隆子。
しかし・・・
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朱音の思わぬ告白。
意外な作者。
切ない想いはどこまでも残り続ける。
第三章:虹と雲と鳥と
錆びていた手すりが壊れ、転落したという。
頭も良く、とても綺麗な二人。
人気者だった、二人の死。
二人-美佐緒と祥子の、突然過ぎる死だった。
生前の美佐緒が書いたと思われる一つのノートが、奈央子の元に届いた。
不可解な言葉。
美佐緒と祥子が、異母姉妹だという事実。
数ヶ月途切れた日記。
「殺されるかもしれない」
と漏らした美佐緒。
美佐緒が死ぬ前に、付き合っていた廣田。
・・・
奈央子と廣田がお互いの記憶や、ノートの内容を手探りで解明していく。
美しく、仲の良かった二人の姉妹。
何か、決定的な何かが起こって、二人の間は決裂した、そして、あの事件が起こった・・。
美佐緒と、祥子が、二人で行った場所(=二人の父親の墓)に奈央子と廣田は向かう。
そして・・・
・・・
二人の父の、過去があまりにも衝撃的で、なかなか眠れなくなってしまいました。
恐かった。
そして、それがきっかけでぎすぎすし始めた姉妹・・。
悲しくなった。
やりきれなかった。
色々な想いがわいては、言葉にならなかったです。
でも、一番好きな話です。
第四章:回転木馬
これは、恩田さん自身を描いたお話だったのですね?
それと、もう一つのフィクションを織り交ぜて。
最初、あれ?これは、恩田さんのこと?
と思いつつ、一つの物語みたいになってきて、違うのかも・・と思ってしまったのですが・・。
もう一編は、とある場所へときた少女、理瀬が、不可解な事件に巻き込まれていく話。
これは、読んでいてちょっと混乱してしまってました。
二つの物語(?)を同時進行で進めているせいなのかな?
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読み終わらないと思っていたこの本でしたが、無事に読み終えました。
一章を読み終えるごとに、ページをめくる手は止まらなくなりました。
そして、永遠の謎。
一体、この『三月は深き紅の淵を』は、誰が書いたものなんだろう・・ということ。
どの章を読んでも、答えは沢山あって、どれが真実なのか分からなくて。
そんな魅惑の本。
私も読んでみたいと、強く思ってしまいました。