なんという目をした男だ――。吉之助の目を見た者は、誰もがそう呟いた。下級武士の家に生まれた西郷吉之助は、貧しいながらも家族や友に恵まれて育つ。のちに大久保利通となる正助とは、素読をし、相撲をとる郷中仲間だ。藩主・島津斉彬の雄姿を間近に見た吉之助は、いつの日かこのお方にお仕えしたいと焦がれるようになる。時は幕末。夢かない斉彬のお側仕えとなった吉之助は、大砲や帆船を製造し進取の気性に富む名君と心を一にし、江戸に京都に飛び回るようになる。迫り来る異国の脅威を防ぐには一橋慶喜を将軍とする以外、道はない。しかし暗躍むなしく斉彬は突然死、宿敵・井伊直弼が大老に就任。さらに国父・久光の逆鱗に触れた吉之助は、奄美大島に遠島を言い渡されてしまう――。
林真理子さんの本です。
恥ずかしながら、林さんの本を読むのはたぶん初。
そしてその流れで、機会があったら原作も読んでみたいなあと思っていたわけなのですが、ようやく読むことができました。
先に言っておくと、TVドラマの西郷どんには大変満足しているクチです。
ドラマ的にも毎回ハラハラドキドキしながら見ていて楽しんでおります。
前編は奄美大島への遠島を言い渡された西郷が愛伽加那に出会ったところくらいまでなので、完全にドラマで見終わったところな訳です。
そのせいもあって、展開が駆け足のように感じて仕方がありませんでした。
とはいえ、ドラマと違う部分もちらほらありつつ、老若男女に愛される西郷の魅力は十分伝わってきました。
篤姫にはまった時は幕末の話をたくさん読んできましたが、いうなれば「徳川側」から見た視点な訳で、西郷が表舞台を一時去っていた訳がここにあり、その間にも月照との心中や、愛加那との出会いなど様々な物語が展開していたことを初めて知ったのでした。
後編へ。
(3.5点)