No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

カササギたちの四季

イメージ 1
 
開店して2年。店員は2人。「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。店長の華沙々木は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の日暮は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の菜美は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない―。


道尾秀介さんの本です。
 
直木賞受賞後第一作ということで、早めに予約していたのになかなかやってこなかったのですが、ようやく手元にやってきましたー。
いや、やっぱり道尾さんの作品を読む前って、凄くわくわくします。
どういう展開の話なんだろ?
 
最近得意の文学系?それともどんでん返しのミステリ?おどろおどろしいホラーかしら?
 
早速読み始めてみると、これはこれは!
 
デビュー作の真備シリーズのような、男二人+女一人のメインキャラクターが登場します。
終始コミカルな展開。
 
真備シリーズの、「道尾」役と同じような存在なのが、主人公の日暮(ひぐらし)。
しかし「道尾」のように間の抜けた役ではなく(笑)、推理力も冴えている普通の男性です。
とりたてて特徴もない平凡な、という表現がしっくりくる。
だけどこの日暮は、探偵の華沙々木(カササギ)を何とか名探偵に仕立てようと陰で奮闘する損な役回り、と聞いたら面白いと思ってもらえるでしょうか?(笑)
 
そうなんです。
今回は終始一貫して、道尾さんのエッセイ等で見られるコミカルな文章が光っております。
そうそうブログやツイッターの道尾さんの文章、コミカルで好きなんですが、良い感じで力が抜けていて私は本作、結構好きだと思いましたね。
 
そして本作は「ラットマン」のスピンオフというか、ラットマンで登場していたバンド名がちらっと出てきたり。
不自然な死体は登場せず、道尾作品には初めての試みではないかと思われるのですが、日常ミステリを描いているのがポイントかと思います。
リサイクルショップの店員で、これでもか!と出鱈目で的外れな推理を自信満々で披露する変わり者のカササギと、ひょんなことで知り合い、カササギの見事な(?)推理で笑顔を見せる中学生の女の子の南見菜美(ミナミナミ)と、菜美の笑顔を消すまいとカササギの推理を現実にすべく、裏工作を図る日暮。
 
日暮の推理は常に的を射ていて、決してカササギや菜美に知れることなく当事者にのみ真相を暴く、というスタイルなんですけど、「冬 橘の寺」が個人的に良かったですね。
 
それにしても、ここまで自信満々に出鱈目な推理を披露するカササギのちょっとずれたところは笑ってしまいますが、それをツッコミつつ陰でしっかりフォローしてあげる日暮が私好みですね。
 
道尾さんの描く主人公は、自分より年上の事が多かったので楽観していたのですが、日暮さんは28歳ということで、同年代じゃん!と菜美の中一という圧倒的若さに眩暈を覚えつつ、楽しく読めたのでした。
 
本作には、本当にほぼ読んでいて息苦しい設定はありません。
なので、最近の道尾作品はちょっと設定が重い・・・と敬遠されていた方にこそ、ぜひ新・道尾ワールドを堪能していただきたいです。
 
ジャンルとしては、真備シリーズと同じイメージですが、もっと気軽に読める感じ、ですかね。
これもシリーズ化されるのでしょうか?
ぜひカササギの迷探偵の活躍ぶりを見てみたいです(笑)