ラジオのパーソナリティの恭太郎は、冴えない容姿と“特殊”な声の持ち主。今夜も、いきつけのバー「if」で仲間たちと過ごすだけの毎日を、楽しくて面白おかしい話につくり変えてリスナーに届ける。恭太郎が「if」で不審な音を耳にしたある雨の日、びしょ濡れの美女が店に迷い込んできた。ひょんなことから彼女の企てた殺害計画に参加することになる彼らだが―。
道尾秀介さんの本です。
何が良かったか、というとラジオのパーソナリティという職業。
「特殊な声の持ち主」という帯に、何かもっと特別なものなのかと思ったら、なるほどラジオのパーソナリティ向きの素敵な声ということなのかと。
私は中学生の頃にラジオを聴き始めて、高校の頃はテレビはほとんど見ない変わりに、ラジオばかり聴いていました。
そこで好きな声のパーソナリティに出会いました。なんて良い声なんだろうと。
しかしその顔を見てみると・・・という事はやっぱりあって、声はいいのになーと思ったものでした。
それは好きなアーティストにも言えることで、ラジオから本当に沢山の良質な音楽に出会ったのですが、声からファンになったものだから、アーティスト写真を見てイメージが違う!と思う事もしばしばありました。
なんというか、そういう懐かしい記憶が呼び起こされる感じが良かったです。
道尾さんの作品の中で、雰囲気としては真備シリーズに近いかもしれません。
どんでん返しと、淡い恋愛模様と、コミカルなストーリーとホロ苦いちょっと切ないような感じと。
道尾さんの全てが詰まった一冊だったなと思います。
他の作品に比べて、ちょっと伊坂さん的な文章のまわりくどい言い方が気になりましたけれど、私は割とこの本の登場人物達のキャラは好きでしたね。
読書メーターの感想を見ると、恵が好きじゃないという意見が結構あったのですが。
不穏な展開を見せて、誰かを殺すとか物騒な展開になったりするのかなと思わせてそうならない(けれどスリリングな展開)ところもまた好みでした。
(4点)