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ぐるぐる猿と歌う鳥

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五年生に進級する春、森は父親の転勤で東京から北九州へ転校することになった。わんぱくで怪我は絶えないし、物は壊すし、友だちは泣かせるしで、いじめっ子の乱暴者というレッテルをはられていた森の転校を聞いても、先生どころかクラスメイトのほとんど誰も残念がってはくれなかった。そんな森だったが、引越し先の社宅の子どもたち―ココちゃん、あや、竹本兄弟、パックとは不思議に気があった。彼らは森をまるごと受け入れてくれた。しかし森は次第に感じていた。この社宅には何か秘密がある。もしくは謎が…。


加納朋子さんの本です。
 
これは児童書の類に入るのだろうか?
大きな文字と振り仮名、味のある挿絵付きなので、結構分厚いなあと思っていたら案外あっさりと読み終わってしまって驚きました。
読み終わりが早かった原因としては、加納さんの文章の読みやすさと、一重にこの物語が面白かったということも理由になるでしょう。
 
小学生の主人公。社宅に住む子供達と、ある秘密。
「パック」という少年の存在は――
 
凄く読みやすくて面白いからさらっと読み流してしまいそうになるけれども、実は重いテーマも盛り込まれている。
戸籍がなく、存在しないはずの少年、過去に受けた傷がきっかけで大人の男性恐怖症になった少年。
いじめっ子のレッテルを張られた主人公――
 
抱えている闇は思っている以上に大きくて、「子ども」故に救われている部分が沢山あることにも読者は気付かされて、
パックがいつか大人に正体がばれてしまったら――
小学校を卒業したあやの行く末とか(男子とばっかりつるんでいられないだろうから)――
 
考えていると結構不安な未来しか見えてこないのに、そんな未来を見せない加納さんの柔らかな文体。
今が幸せであることの尊さをふと痛感するような、不思議な余韻の残る話でした。
 
児童書だからと言って読まないのは絶対に勿体ない!
 
九州弁が可愛いです。