No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

皇女和の宮

幕末の京。仁孝帝の没後にその皇女として生れた和の宮は、有栖川家の若宮・熾仁親王と婚約し、興入れの日を楽しみに待っていた。だが、公武合体を狙う岩倉具視らによって、この婚約は覆された。二人の宮は、幼少より和の宮に仕える夕秀の手引で駆落ちを図るが果たせず、和の宮は将軍家茂に嫁した。家茂の病没、十五代将軍慶喜による大政奉還の後、二人は江戸で再会を果たすのだが…。華麗なる長篇悲恋絵巻。

*-*-*-*-*-*-*

川口松太郎さんの本です。

和宮の本を読みたくて、色々探していたら見つけた本です。
朝日新聞に連載当時は、まだ自分は生まれていませんでした。また、映画や舞台化もされているそうですね。

今回の話は、歴史に必ずしも忠実ではありません。
公武合体のため、婚約者のいる身であるにも関わらず、徳川家茂に嫁いだ悲劇のヒロイン和宮

歴史的には家茂と和宮は中睦まじかったと伝えられていますが、本書では婚約者であった有栖川宮と恋仲であった宮が、その想いを断ち切れぬまま徳川家に嫁ぎ、ひたすらに有栖川宮を想い続けたものの、生涯その想いが叶う事はなかった悲恋が描かれております。

徳川の支配する時代は幕を閉じ、明治という新しい時代がやってきてもなお、徳川という名は大きく残り続けます。
公武合体の道具にされた和宮の想いは、ただ一つも変わりなく有栖川宮を思い続けていたというのに、徳川家に嫁いだ身であるゆえに、再婚もままならない。
また、有栖川宮についても天皇家であるという立場から想いを貫く事ができない-

和宮と同じ丙午の年に生まれた美しい陰陽師の娘である夕秀、和宮有栖川宮の三人のははかなく淡い想いが伝わってきて、切ないラストでした。

古さを感じさせない、余韻の残る物語で大変満足でした。