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和宮 -後世まで清き名を残したく候-

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徳川幕府の崩壊のなかに身を置き、「朝敵」の汚名を蒙むるその渦中で、徳川宗家の存続という重責を果した和宮。彼女が、帰京して念願の父仁孝天皇の霊廟を参拝した、明治二年の和宮の最終章の歩みを序章にとりあげ、第一章から順を追って、誕生からの人生を宮中の年中行事のなか、仕来りに従ったなかで成長する宮の幼少期からを綴っていくことにする。

辻ミチ子さんの本です。

和宮関連の本を読み漁っていた時、大体一番目か二番目くらいにはこの本も、という感じで紹介されている気がする本作。
実はまだ読んだことがなかったので借りてみました。

和宮といえば、「公武合体」のため、徳川家茂に降嫁した皇女であり、江戸城無血開城と、徳川家存続をかけて天璋院と共に尽力した人物。
しかし知名度的には大河ドラマになった「篤姫」よりは目立たない存在という印象です。

そのせいか、読んできた色々な歴史の本でも、篤姫の陰に隠れてあまり目立った活躍が書かれていないことが残念でした。また、どうしても江戸城入城からのストーリーが中心であることも。

本作は、「和宮」にスポットをあて、誕生から亡くなるまでの和宮の功績や残された資料から、じっくりと和宮のことが紹介されています。

特に生まれから降嫁までの京都での生活や(ただ、当時の言葉や御所風の諸々が難しいのが難点)、江戸城無血開城後も、天璋院の力になるなどの姿も知ることができたのが新鮮でした。

皇女でありながら徳川家の人間でもあり、京都に戻りたいと願いながらなかなか戻ることができなかった苦悩。

後世まで清き名を残したいと願った和宮の生き様を知ることができました。
(3.5点)

坂の途中の家

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最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。

刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、
子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、
いつしか彼女の境遇にみずからを重ねていくのだった--。

角田光代さんの本です。

角田さんの本は個人的には当たり外れがあるのですが、「八日目の蝉」以来かもしれない、のめりこんでしまった作品です。

WOWOWでドラマ化ということで予約して少し待ちましたが、読めました。

久々に読んだ後、余韻を引きずるほどの衝撃でした。
衝撃というのとは違うかな、後からじわじわくるというか。

読後に感想をかけたらその時の気持ちが表現できたかと思うのですが・・・今更感想を書いているという。

結婚して子供がいて、義理の両親ともそれなりに上手くいっていて、夫婦仲も決して悪くない。
普通に暮らしていればこのまま幸せな生活が続いていたのだろう。

ところが、補充裁判員に選ばれたことによって、日常が少しずつ変化していく。

変化?いや、今まで気づいていないだけで、ずっと続いていたこと。
気づいていなかった悪意。

被告人の境遇を知るうち、いつしか自分を投影していた主人公。

その感覚がすごく怖いと思いました。

何故か、自分が主人公と同じ感覚に陥っていたからです。

私は結婚はしているものの、子供はいません。
なのに、夫の何気ない言葉、義母と接するときに時々感じるちくっとした痛み。
自分も、気づいていないだけなのではないだろうか?

いつの間にかどっぷりとこの物語に漬かっている自分。
現実とフィクションの境界が分からなくなるような感覚。

ぞくっとしました。
解説でも書かれている通り、子供を持っている女性ならなおさら。
この主人公は「自分」なのではないか?
そんな風に思わせる話でした。

被告人が感じた他人からの攻撃は事実だったのか。
被害妄想なのか、それとも実際に行われていたのか。

真実は分かりませんが、実際にそういう風に感じて誰にも辛さを吐露できずに子供を虐待死させてしまう母親は存在するのでしょう・・・
失われた幼い命がただただ悲しく、やりきれません。
(4.5点)

知識ゼロからの太平洋戦争入門

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どう闘ったのか、なぜ敗けたのか。真珠湾の大勝利から、沖縄の悲劇まで。 

半藤一利さん監修。

先日読んだ「図解 太平洋戦争」でおおよその流れはつかんだものの、もう少し詳しく知りたいと思いこちらも借りてみました。

こちらも教科書では記載されていない、列島での激戦と戦況が詳しく説明されています。
教科書のように、淡々と描かれているところが私には逆に良かったなと思います。
余計な説明や著者の感想などが入っていないところ、事実だけを述べていることがより戦争の悲惨さを読者に伝えます。

今回は、日本やアメリカの側からだけではなく、第一次世界大戦の起こり、敗戦により苦境に立たされたドイツの立場が、後の第二次世界大戦へと繋がっていく悲しさ。
ファシズムの台頭や世界情勢がこのようになっているときに、日本では何が起こった、というのがリンクされて紹介されていたのが分かりやすかったです。

また、終戦後のロシアの侵攻や、強制収容所に収監された人々のこと、戦争が終わっても戦いは終わっていないとずっと戦いの地に残っていた兵士など、戦争終結後も戦争は完全には終わっていなかったという事実を知りました。

教科書では本当にさらっとしか書かれていないんだなとしみじみ思います。

島々での戦いで、特に印象的なのが「インパール作戦」。史上最悪の作戦と言われる戦いです。

いつの世も政治的な策略や国家間の対立があって、一部の人間が決めた方針でたくさんの人々の命が失われている・・・やりきれないです。

平成の30年間が戦争のない平和な時代だったこと、なんと尊いのだろうと心から思いました。

すべてわかる 図解 太平洋戦争 (学校で教えない教科書)

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前史から開戦、東南アジアでの快進撃から玉砕の太平洋戦線にいたるまで、豊富な図版、写真、地図を駆使して、その全貌を伝える、まったく新しい入門書。ジャーナリスティックな視点で、見開き展開でわかりやすく史実を伝える。 

序章 太平洋戦争前史/1章 開戦/2章 東南アジアでの快進撃/3章 戦線拡大/4章 戦局の転換/5章 玉砕の太平洋/6章 日本に迫る米軍/7章 大日本帝国の終焉/8章 日本の復興とアジア

非常にわかりやすく書かれている本でした。

この手の本は、構成が下手くそだったり説明が微妙だと読むのが苦痛なレベルで読みにくかったりするものですが、単元ごとの要点がまず書かれており、その時に何が起こったのか、がより詳しく書かれているので非常にわかりやすかったです。

「学校で教えない教科書」ということですが、教えないというより教えられなかったのかもしれない、というようなことも考えてしまいました。

パールハーバー真珠湾攻撃から始まる日米開戦。
開戦当初は日本軍が優位と思われた戦争でしたが、物資の不足、兵力の不足、圧倒的な軍事力の差に苦境に立たされていく日本。

教科書では有名な真珠湾攻撃、原爆投下、ポツダム宣言玉音放送マッカーサー等々などは書かれるものの、その間に起こったレイテ島の決戦、硫黄島の戦い(映画で有名にはなったでしょうが)、玉砕が続く日本軍の劣勢、そのほかにも島々での戦いがこんなにあったのか!と初めて知るものが多くて自分の無知さに驚いてしまうほど。

勝利どころか玉砕続きの日本軍なのに、国民には勝利という嘘の情報が流されていたこと、軍の中にも米軍との戦争に勝ち目がないと戦い自体に意味がないと考えている人がいたこと、天皇すら、誰もそれを止めることができない時代だったこと・・・・知らなかった事実をたくさん知ることができました。

そしていかに無謀なことをしていたのか、軍の方向性もめちゃくちゃで指揮命令系統が混乱する中で、生きている限り永久に戦えという無茶苦茶な命令・・・
大和魂といえば恰好良いようにも思いますが、特攻作戦、特に人間魚雷の成果を見て、どれだけの人が無駄死にをしたのだろうと思うとやりきれなかったです。

学徒出陣、婦女子の竹やり訓練・・・これで本当に戦争に勝つ気があったのかと疑うものばかり・・・
ポツダム宣言の受諾までの時間・・・二度の原爆投下・・・

決断をもっと早くしていれば、犠牲者はもっと少なく済んだのではないでしょうか。

嘘みたいですが、本当にあった歴史。
もっときちんと知っておかないといけないと感じました。

読んで損はしない本だと思います。興味深く読みました。
(4.5点)

彼方の友へ

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「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――
平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――

伊吹有喜さんの本です。

やばい・・・凄く良かった。そして自分好み、ドンピシャでした。

大正ロマン、昭和レトロが好きな自分にはドンピシャの世界観。
そして登場人物のどれもが愛おしい。なんて素敵な人たちよ。

戦前、戦時中、終戦の時代と共に歩む、少女向け雑誌の編集部が舞台。

戦争が始まっていても、まだ遠い彼方の戦争の影響はほとんどない時代。
イカラでオシャレな少女たちのファッション、愛らしい雑誌の付録、憧れの雑誌の編集部で働く事になったハツ。

個性的で美男美女揃いの作家先生、何もできなかったハツが少しずつ成長していく姿も良いです。

そして戦況が厳しさを増していく中で弾圧される表現。
物資の不足、危険思想とみなされた作家の不審死、招集・・・悲しい時代を経て、現代に続いている・・・

戦争当時でもこういった雑誌が創刊されていたことがどれほど少女たちを勇気づけたことでしょう。

有賀との淡い恋。
暗号でつづる最初で最後のラブレター。

ラストだけではなく、所々で胸が熱くなり、思わず涙がでそうでした。

電話も容易ではなく、手紙のやりとりも難しい時代。
こんな恋だからこそ、甘く切ないのでしょう。

素敵な作品に出会えてよかったです。文庫化したら絶対買おうと誓いました。

史絵理が可愛かったなあ。
(5点)

別冊ランドネ いつか絶対泊まりたい!山小屋ガイドBOOK




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日帰りの山歩きから一歩ふみ出して、「山小屋」に泊まることで、ゆっくりと山の時間を味わえます。そこで、日本全国の個性豊かな山小屋のなかから、ランドネ編集部がおすすめする山小屋を楽しみ方別にピックアップ。山小屋の魅力と、宿泊前に確認しておきたい詳細データ、たどり着くまでの登山ルートを美しい写真とともに解説していきます。

コンテンツ:
・歩かずにたどり着ける山小屋リスト
・森のなかで一泊できる山小屋リスト
・歩く時間は3時間以内の山小屋リスト
・山頂すぐそばの山小屋リスト
・朝焼け夕焼けを堪能できる山小屋リスト
・せっかく行ったら2泊したい山小屋リスト
・スケジュールの立て方
・山小屋泊の基本マナー
・快適に楽しむための装備リスト
・山小屋好きのあの人に聞く、
・最新・山小屋事情

書店で見かけて読みたいと思っていた雑誌。
買えよって話ですが、図書館で借りました。

いやもう、山の本ってなんで読んでいるだけでこんなにわくわくするのでしょう。
ランドネなので写真がオシャレで、緑が美しい!

雑誌に掲載されていた八ヶ岳のオーレン小屋、北アルプスの燕岳荘には宿泊したことがありますが、他にも泊まってみたい!と思う山小屋がたくさん紹介されていました。

温泉に入れる煙草屋旅館、山小屋とは思えないオシャレ空間の徳澤園が気になる!

山小屋に初めて泊まる人が読む、というほど詳しい説明はない気がしましたが(あと、山のルートマップがあまり詳細じゃないのと、所要時間などが文字だけなので分かりづらいかも)、山小屋箔に興味があるんだけどどうなのかしら、と思っている人が読むと、自分でも泊まれそう!と思える感じではあります。

私は山の本を読んでいるだけでテンションが高まってくるので、わくわくしながら読んでいましたよ。

山小屋に泊まらなければ体験できない山の夜、天気が良くなくてまだ経験できていない星空、山の上で食べる美味しいごはん(毎回高山病になってあまり食べられないが・・・オーレン小屋のボルシチは美味しいです)。
たくさんのわくわくが詰まった一冊でした。

がっつり登るための山小屋ではなく、山小屋に泊まりにいく、というレベルで軽めにいけるところも結構あるようで、また山小屋泊したいなあと思いました。

ランドネはそれにしてもオシャレですね。モデルさんも、ファッションも。
(4.5点)

仇敵

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幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす―。不正を知った男は謎の死を迎え、恋窪は“仇敵”への復讐を誓う。

池井戸潤さんの本です。

うーん、これはちょっと自分には難しかったです。


銀行ものの話なので相変わらず銀行事情は難しいのですが、主人公自体が固い印象を受けてあまり入りこめず。
一応読み終えたものの、私にはあまり楽しめなかったです。

好みの問題ですね。
(3.5点)