妻――それはいちばん近くて、いちばん不可解なアナザーワールド。「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」。ある日、六年間連れ添った妻はこう告白し、ホンモノ捜しの奇妙な日々が始まる……。真贋に揺れる夫婦の不確かな愛情を描く表題作ほか、無人の巨大マンションで、坂ブームに揺れる町で、非日常に巻き込まれた四組の夫婦物語。
三崎亜記さんの本です。
相変わらずの三崎ワールドでした。
三崎さん、本当にどれだけのアイデアの抽斗を持っているのでしょう。
偽物の妻、坂道愛好家、断層で家族を失った被害者・・・・
突拍子もない設定ながら、もしかしたらあるかもしれないと思わせる世界感は流石です。
断層被害者の夫と、妻を取り戻そうと妻が消えた日とまったく同じ日を作りだして頑張る夫。
その妻と夫のバカップル並みに仲睦まじい夫婦の様子と現実の落差があまりにも激しくて、切ない。
三崎さんの描く女性もかなり自分好みなのでどの夫婦も微笑ましく、不思議ワールドと共にすっと入ってきました。
今回も楽しませてもらいました。
個人的には三崎ワールドを堪能するなら短編集、って思っています。まさにそんな小説でした。
（4点）
