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花が咲くとき

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札幌で暮らす小学六年生の瀬川大介には、自らの鬱屈を晴らすささやかな楽しみがあった。
それは隣家に住む、指が二本ない謎の老人佐藤北海が見守る貧弱な樹がつける花芽を削 り取ること。開花を待つ北海の喜びを奪うことで、不満を溜めた老人が“暴発"することを願っていた。だが、夏休みに入ったある日、大介の油断を衝いてその樹が白い花を咲かせる。それを見た北海は突如ボストンバッグを抱えて旅に出発、両親と喧嘩して家出をするつもりだった大介は、急遽、彼を追うことに……。

乾ルカさんの本です。
 
おじいちゃんと孫系の話はそれだけで涙腺が緩みますが、隣の偏屈おじいさんの北海と、クラスメイトから嫌がらせを受けたことから、ナイフを持ち歩くようになった少年・大介の旅の物語であります。
 
単純に旅の話、という訳ではなくて、偏屈で打ち解けることなどできないと思っていた北海と、大介の関係が少しずつ変わっていくことであるとか、見ず知らずの他人である旅で出会った大人達が大切な事を大介に教えてくれることであるとか。
北海の戦争体験がこの旅の終着点に繋がっているのだけど、最初のころに比べるとこの短い間に少年がどんどん成長していくのが分かります。
 
また、ラストは5年後、高校生になった大介が、この旅の経験を通して大きく成長していることが分かり、頼もしいやら感慨深いやらで思っていた以上に良い話でした。
 
どちらかというと・・・少年の成長物語という感じかな。
でも最初は突っぱねるばかりだった北海が、大介に対して1人の人間として向き合ってくれていることに気付いたあたりから、読んでいても心地良かったです。
 
乾さんは本当色々な話を書ける人ですよね。
こういう話も有りだと思います!
(4点)