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女神のタクト

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進め、前へ。音楽は魂だ! 『盤上のアルファ』で鮮烈デビューの著者、待望の最新刊。30歳にして職と男をなくした矢吹明菜。旅先で出会った老人に「アルバイトせえへんか?」と誘われる。金がなく公演もままならない小さな楽団に、ある男を連れてくれば報酬があるという。それが明菜と、一度は世界的に活躍した引きこもり指揮者・一宮拓斗、そしてオルケストラ神戸の出会いだった。笑いがいつしか感動になる音楽の奇跡の物語。


塩田武士さんの本です。
 
書店で平積みになっているのを見かけて気になって予約した本でした。
初めて読む作家さんだし、面白そうに見せかけてそうでもないパターンかな、と正直あまり期待はしていなかったのです。
 
が、
 
面白かったです。
個人的にこういうノリは大好き(笑)
 
まず、バンドや吹奏楽、クラシックなどなど、音楽に携わる物語というだけで採点は甘くなるのですが(好きなもので・・・)、コミカルな文章がとにかく大変読みやすい!
割と厚みのある本だったので、読むのに少し時間がかかるかな、と構えていたのが嘘のようにページが進みます。
 
胡散臭い健康食品の会社をクビになり、傷心旅行に出ていた30歳の美人・明菜。
この年齢設定が、まず良いですよね。
若すぎず、でもまだまだ人生始まったばかりという30歳ジャスト。
 
そんな明菜が偶然出会った老人から、報酬と交換にある仕事を頼まれます。
「オルケストラ神戸」という楽団に、とある指揮者を連れてきてほしい、と。
 
その指揮者は、過去に世界で活躍した経歴を持つ36歳の拓斗。
内股で何処か頼りなげな外見。
恐喝と脅しで無理やり明菜に連れられた「オルケストラ神戸」でぜひ指揮者をしてほしいと強引に頼まれるも、尻込みしてなかなか決断を下せない拓斗の臀部を思い切りけり上げる明菜。
ヤクザまがいの狡猾な戦法で拓斗を無理やり楽団に引きこむパンチパーマの別府。
 
いつの間にか周りのペースに乗せられ(というより強制的に引きずり込まれ)た拓斗だったが、いざタクトを手にした瞬間、顔つきも変わり音楽に対する真剣な気持ちが伝わる。
いつしか明菜は拓斗に惹かれている事に気付く。
 
明菜自身も、過去に音楽と決別するしかなかった出来事があったことを匂わせるのですが、最後の最後まで明かされません。
それでも、逆行に立ち向かってどんどん前に進んで行く力強さ、勇ましさが大変好ましい。
 
見るからに怪しい別府、個性豊かな楽団のメンバーがとにかく良いし、終始ふざけた調子でテンポ良く進む展開に引きこまれ、ぐっと感動をもたらす事実を明かしてきたりする。
文中に出てくる音楽はかなり真剣に書かれているので、ゆるい笑いと真剣が交互にあるような感じです。
固すぎないからとっつきやすく、「船に乗れ!」などが少しとっつきにくかった、と思う人や、「さよならドビュッシー」などのミステリ展開を抜いた純粋な音楽の話として楽しめた人、そういう人にはぜひお薦めしたいかも。
 
気負わずにクラシックの世界を覗く事ができる、みたいな感じでしょうか。
 
思っている以上に楽しめました。オススメです!