隼太は中学2年生、陸上部。ずっとシングルマザーの息子だったが、進級した春に名前が変わり、ひとりの夜は優ちゃんといっしょの夜に変わった。優しくてかっこいい優ちゃんを隼太は大好きだったが、しかし、優ちゃんはときどきキレて隼太を殴る……。でも絶対に優ちゃんを失いたくない。隼太の闘いが始まる。
隼太は明るい明日を見つけることが出来るのか。思わず応援したくなる、隼太の目覚めと成長の物語。
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瀬尾まいこさんの久々の新刊です。
そういえば、しばらく本を出されていなかったですね。
相変わらず、国語教師をされているだけあって、文章がとても上手いです。
癖がなくて、温かい文体なんで、とても読みやすいんですよね。
今回は、今までの瀬尾さん作品と少し毛色が違う感じでした。
母子家庭で育った中学二年の隼太と、母の再婚相手で歯科医の優ちゃんとの物語。
普段は温和で優しい優ちゃんは、ふとしたきっかけでキレると、隼太を殴る。
それでも、お互いに血の繋がらない親子であっても好きなのに、苦悩し、いかにしてキレないように、穏やかな暮らしが出来るかを二人は模索している。
ピンと張り詰める空気、キレる前の兆候…
まだ成長途中である隼太からしたら、圧倒的な力の差がある。
カルシウムを補う食事、虐待の本を読んでの情報収集、絵本を読んだりと模索しながら、少しずつ距離を縮めていく二人だが、穏やかな生活がいつ壊れるかと不安な日々を過ごしている。
中二の多感な時期でもあり、先輩の靴を捨てたり、先生を泣かせたりと突発的な行動は、家庭問題の影響がありありと見られるのに、本人は自覚がなかったり…ハラハラしてしまいました。
最終的に少しずつ良い方向に向かってのハッピーエンドだったら、非現実的かなと思ったけど、オチはちゃんと現実的でした。
ただ…そのせいで、なんとなく中途半端な終わり方になっていた気がしちゃいました。
悪くないだけに、今後もこういった重い内容の作品などにも挑戦していって欲しいですね!