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護られなかった者たちへ

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仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実―。


中山七里さんの本です。

ほぼ外れのないと思っている中山さんの作品ながら、中盤までなかなか入りこめなくて苦戦しました。
そのせいか、読み終えるまでに結構時間がかかってしまいました。

生活保護の漠然としたイメージ。

不正受給をしている人が結構いる
・少しの贅沢品も許されない
・受給申請が下りない

何ともあまり良い印象のない制度。
特に本当に受給しなければ生活が成り立たない人の申請は通らず、不正な手段で受給している一定数の方が世間的に目立っている気がします。
本当にお金が必要な人にはいきわたっていないという印象というか。

とはいえ、受給ができる人の条件であるとか、どういった申請が必要なのか、という知識は皆無に等しいかもしれません。何とか自分の稼ぎで普通に生きていけているからお世話になることもないものなので。

そんな無知の自分でも、けいさんへの福祉保健事務所の対応はあまりにも残酷だと感じました。
人様が納めた税金を使わせていただくなんて申し訳が立たない、そんな風に思う世代がある。
自分が生きていくための最低限の生活ができなくなり、最後はティッシュを食べるしかなくなったけいさんの末路はあまりにも辛かったです・・・

けいさんを気にかけてくれる近所の少年と、今回の事件の容疑者でもある男が身近にいても、それぞれの事情もあり、けいさんを助けられるほどの稼ぎがない。これもまた何とも悲しいことだと思います。
特にこの男はあまりにも運が悪く、あまりにまっすぐすぎて損をするタイプで・・・

犯人はこの人なのだと普通にミスリードされて読んでいましたが、あーこの人が・・・!という驚きの真犯人でした。

でも単純に犯人を憎めないところに、社会福祉の闇を見た気がします。
本当に必要な人に使われないなんて、こんなことがあっていいのでしょうかね・・・

考えさせられた話でした。
(3.5点)