澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋燕」。澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。
高田郁さんの「みをつくし料理帖」シリーズのまさかの新刊!
書店で見かけてうれしくなったのはいうまでもありません。
よもやシリーズ完結後に新刊を読める日が来ようとは。
種市の澪を思う気持ちとひょうきんな憎めない人柄に癒される冒頭の話から、小松原の妻の話、そしてあさひ太夫として生きることになった野江の決して平坦ではない遊女時代の話・・・特に野江の話は、又次のことを思い出すと目頭が熱くなってたまらなかったです。
野江の強さがどうやって作られていったのか、今まで深くは描かれてこなかった過去が明かされているのが良かったですね。
そして最後に源斉先生と夫婦になってからの現在の澪の姿が描かれていて、勿論順調にはいかないものの、これまでの苦労が身を結んだんだなとしみじみする良い展開で、大満足で読み終えたのでした。
これでこのシリーズ自体は完結ということみたいですが、名残り惜しいですねえ。
本当に面白いシリーズです。
(4.5点)