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明日の食卓

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息子を殺したのは、私ですか?

同じ名前の男の子を育てる3人の母親たち。愛する我が子に手をあげたのは誰か――。

静岡在住・専業主婦の石橋あすみ36歳、夫・太一は東京に勤務するサラリーマン、息子・優8歳。神奈川在住・フリーライターの石橋留美子43歳、夫・豊はフリーカメラマン、息子・悠宇8歳。大阪在住・シングルマザーの石橋加奈30歳、離婚してアルバイトを掛け持ちする毎日、息子・勇8歳。

それぞれが息子のユウを育てながら忙しい日々を送っていた。辛いことも多いけど、幸せな家庭のはずだった。しかし、些細なことがきっかけで徐々にその生活が崩れていく。無意識に子どもに向いてしまう苛立ちと怒り。果たして3つの石橋家の行き着く果ては……。

椰月美智子さんの本です。

これまで読んできた椰月作品を良い意味で裏切る作品でした。
温かく優しい気持ちになれる本が多い印象の作家さん。

ところが、この本の冒頭は不穏極まりない内容です。

これからこの3人のうちの母親が、自分の息子を虐待死させてしまうのだろう・・・結末が最初に描かれるため、どんなに幸せな描写でもこのうちの誰かが・・・という不安がぬぐえないのです。

どこにでもある平凡な家族。

最初はどんなに大変でも子供がいれば頑張れる、というような、子供を持っていない人が想像するような幸せな話が続きます。

ところが読み進めていくうちに、仕事と両立しながら子育てをするということの厳しさ、自分の体調が悪い時、気分が落ち込んだり疲れている時、イライラしているときでも子供はそれを分かってくれないという現実。
手がつけられないほどやんちゃな子供、聞き分けが良く親に迷惑をかけたことなどなかった子供・・・そんな子供をコントロールできない母親の「現実」の姿が描かれます。

これは特に、兄弟喧嘩がヒートアップして全くいうことを聞かない子供を持っている親の話が、ああ現実はこんなもんなのだろうな、と子供を持っていない自分にもリアルに感じられるほどで、こんな状態ならば虐待してしまう親もいるのかも・・・と想像させられるところが不穏でした。

最終的にはほっとするような、しかし苦味の残る結末で、最初から最後までぐいぐい引き込まれてしまいました。

大阪の親子の話はしみじみ良い親子だなあと思えるので良いのですが、良い子を演じていた息子の家族のその後が書かれていないので不安が残りますね。こういう子供が一番質が悪いよな・・・そして小説でよく出てくるタイプの「頭の良い」子供。。。

子供を育てるって本当に大変なことだなと思う本。
子育てをしている母親って・・・、とにかく尊敬です。
(5点)