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その女アレックス

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おまえが死ぬのを見たい――男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。
ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、慟哭と驚愕へと突進する。
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ピエール・ルメートルさんの本です。

オススメの本は何ですか?
と聞くと、何人かから本書を薦められたことがきっかけで読んでみる事に。

文庫の裏表紙のあらすじ、読み始めて早々に「ああこれは、誘拐犯からの脱出劇を書いた話なのだな」と思いました。

目撃者からの乏しい情報、事件を追う刑事は誘拐された女性が一体何者なのか?という疑問にぶちあたります。

同時進行で、何か犯人から恨まれているらしい誘拐されたアレックスという女性が、死と隣り合わせの絶望的な状況から、奇跡の生還を果たします。

その時点でまだまだ残りのページ数は減っておらず、「おや?」と思い始めます。

誘拐犯から命からがら逃げ出したはずのアレックスが、何故か自力で家まで帰ろうとする行動。
そしてついに監禁現場に辿りついた警察が、事件を追ううちにアレックスは殺人の容疑者であると突き詰めていくのです!

被害者と信じて疑わなかったアレックスが、実は別の殺人事件の加害者だった・・・!
その驚きから、何故アレックスがゆきずりと思われる人間達を簡単に殺すのか。
謎が深まる中、その無残な殺害方法も去ることながら、数々の偽名をつかい、関わった男女を次々と殺めていくアレックスの行動は不可解さを増すばかり。

一見すると何の接点もないように見えていた事件が、アレックスの悲しい過去に繋がっていたことに気づく時、驚愕と共に一度読んだだけでは腑に落ちない数々の疑問が湧き上がってくるのでした。

(ネタバレあります)

アレックスを「支配」していた異父兄。
それに関わった人物達への復讐=殺人。
最も憎い相手である異父兄への復讐は、アレックスの自殺を殺害と見せかけ、その容疑が異父兄にかかるように入念に準備をしてきた伏線だったのですね。

一度読んだだけでは分からないのですが、この警察達は、アレックスの過去に同情して、
アレックスの企みを完遂させるために容疑者として異父兄を逮捕したということなのでしょうか。

実際は殺害されたのではなく自殺であるはずだけれど、それを証明する人は誰もいない。
状況証拠が揃っているからこそ、このまま「殺人事件」として処理することにしたということなのですかね?

私の理解力では分からない部分もあったものの、
「脱出劇」「殺人犯とそれを追う刑事モノ」「復讐劇」と一度に3つの物語を読んだような満足感がありました。

ページ数の割に文字数が多い印象で、なかなか読み進められなかったのが辛かったですが、評判の通りの作品でした。
(4点)