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症例A

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精神科医・榊、担当患者で17歳の亜佐美、そして女性臨床心理士の広瀬。亜佐美は境界例か、解離性同一性障害か? 正常と異常の境界とは? 三つの視線が交わる果てに光は見出せるのか?

多島 斗志之さんの本です。
 
貸してもらったもので、初読みの作家さん。
 ページ数がかなりあり、また精神病の患者を扱っているので重いテーマです。
 
小説の中で出てくるこの手の題材の場合、小説を盛り上げるためにと言ったら失礼ですが、
 物語にアクセントを添えるためにといった形で扱われている場合がほとんどだと思うのです。
 
特に猟奇的殺人者にありがちな設定というか。
 
そういった意味で、ここまでしっかりと「病気」を描いているのは初めてかもしれないです。
それほどまでに深く丁寧に描かれています。
 
また、物語として入院患者である少女がメインの話かと思わせて、実は多重人格者である女性の話が軸になっていくところも面白いです。
 
少女を担当していた医者の不審な死、少女の病気は一体何なのか。
様々な角度から実にじっくりと味わう事ができ、読み終えた後に深い満足感がありました。
 
具体的な結末を示されていない事は人によってはもやっとするかもしれませんが、
私は一筋の光が差し込むようなこのラストは嫌いじゃないです。
 
あと以前自分が書いていた小説の設定になっていた病気が出てきたので、イメージしやすかったです。
そしてやはり私の場合、小説を盛り上げようというただそれだけで登場している設定なのでした。
 
小説を書くとなったら、ここまで突き詰めて書くくらいでなければ、読み手に伝わらないのだなあと実感しました。
 (4点)