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ドクター・デスの遺産

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警視庁にひとりの少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。当初はいたずら電話かと思われたが、捜査一課の高千穂明日香は少年の声からその真剣さを感じ取り、犬養隼人刑事とともに少年の自宅を訪ねる。すると、少年の父親の通夜が行われていた。少年に事情を聞くと、見知らぬ医者と思われる男がやってきて父親に注射を打ったという。日本では認められていない安楽死を請け負う医師の存在が浮上するが、少年の母親はそれを断固否定した。次第に少年と母親の発言の食い違いが明らかになる。そんななか、同じような第二の事件が起こる――。

中山七里さんの犬養シリーズ。
 
これは・・・何とも考えさせられるテーマでしたね。
 
犯人が徹底的な「悪」であればただ憎むべき対象として読んでいればいいのです。
が、この「犯人」は果たして本当の悪なのだろうか・・・と考えさせられるところが、今回のテーマだと思います。
 
例えば自分の家族が、恋人が、親しい友人が病気で長く苦しむ姿をただ見ているだけしかできないとしたら。
もし、その人が安らかな死を望んでいるのだとしたら・・・
そんな時、「ドクター・デス」のような存在が現れたら。
 
果たしてその誘惑に打ち勝つ事ができるのだろうか、と考えてしまいました。
 
特に犬養は病気の娘を持つ父親でもあります。
刑事として「犯人」を捕まえる事が任務であると同時に、もし自分の娘が安らかな死を望んでいたとしたら・・・という考えを持ってしまうのは当たり前で、「犯人」逮捕にも関わらず、ここまでしっくりこない感じはなかなかないのではないかと。そういった物語でした。
(4点)