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獣の奏者 外伝 刹那

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エリンとイアルの同棲時代、師エサルの若き日の苦い恋、息子ジェシのあどけない一瞬……。 本編では明かされなかった空白の11年間にはこんな時が流れていた!
文庫版には、エリンの母、ソヨンの素顔が垣間見える書き下ろし短編「綿毛」を収録。
大きな物語を支えてきた登場人物たちの、それぞれの生と性。

上橋菜穂子さんの「獣の奏者」シリーズ最終巻。
 
あーこれで終わってしまったのかと思うと・・・
もうのめりこむように読んでましたよ私・・・
 
外伝は、エリンの母ソヨンの話、イアル目線のエリンとの結婚に至るまでの物語、エサル師の若かりし頃の一つの恋の話、そして幼いジェシの子育てのシーンを描いたエリンとイアルの話が収録。
 
なんていうか、「大人の愛」の物語でした。
 
特に寡黙で実直な印象の強いイアルが、抗いがたいほどにエリンに惹かれ、そして結ばれ家族になるまでのストーリーは、まるで薄氷の上を歩いているかのような危うさが漂います。
 
王獣使いのエリンと元堅き楯のイアル。
この二人が結ばれることで待っている未来はどこまでも暗い。
それでも抑える事のできない愛情。苦悩するイアルの想いがひしひしと伝わってきて苦しいほどです。
 
最初からお互いが惹かれあっていた相手同士。
運命がどんなに過酷であっても、生まれてくる子供に背負わせる重荷が分かっていようとも、ラストの幸せなひと時の物語を読めば、きっとこれで良かったのだと思うのです。
 
どちらかというと寡黙で理知的なエリンとイアルなのに、お喋りで腕白な子供になったジェシの明るさに何度救われたことか・・・!
 
そしてエサル師の若かりし頃のストーリーも収録。
本編ではエリンの母親とも思える力強い存在でしたが、こんなことがあったのね・・・としみじみ。
そしてエリンが学ぶ姿勢は、まんまエサル師の昔を見ているようでもありました。
 
ああ、読み終えてしまいました。
こちらも素晴らしいシリーズでした。
 
(4点)