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小説 言の葉の庭

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また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら―。雨の朝、静かな庭で2人は出会った。靴職人を志す高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野。迷いながらも前に進もうとする2人は、どこへ足を踏み出すのか。

新海誠さんの本です。
 
実は新海作品の中で、一番にこの話が好きです。
 
初めて観た作品は「秒速、5センチメートル」。
私はいまいちこの作品の良さが分からなくて。表題作のみしか見ないまま、数年経ち、「君の名は。」が面白かったので、改めて3話まで観たのですが、やはりいまいち良さが分からなかったのです。
 
で、「君の名は。」の大ヒットを記念して、無料で公開されていたこの作品。
名前すら恥ずかしながら知りませんでした。
 
でも、観終わった後に鮮烈に残る「新緑」の色。
雨がこんなにも魅力的なんて・・・。とにもかくにも、私は一瞬でこの映画に魅了されたのでした。
 
私だけがひっそりと思っていることかもしれませんが・・・
新海作品の映像もストーリーも最高なのに、人物だけが魅力を感じなかったんですよ。。。
なんだろう、もう少しこの人物達が魅力的だったらなあ・・・と残念に思っていたのです。
 
けれどもこの「言の葉の庭」を観て驚きました。
あれ・・・!人物が魅力的じゃないか・・・!と。多分一番そこに惹かれたように思います。
(瀧と三葉より年下のはずのこの男の子が、物凄く大人びて見えるのがまた!)
 
1時間にも満たない短い映画ですが、無駄なところなど一つもないと思う最高傑作。
ストーリーも、舞台も風景も、テーマ曲の秦基博さんの「Rain」も。
その世界観の全てが最高です。
 
という訳で、小説を読んで思った率直な感想。
 
兄の話とか先生の話は蛇足かな・・・と。映画がいかに最小限に、必要なところだけを見事に凝縮している感じなので、この小説を元に映画を作っていたとしたら、魅力が半減していたかもなあと思ったりはしました。
 
ただ、雪野を追い詰めた生徒の意図が全く分からなかった(それに理由があったのかすらも)だけに、元は普通の何処にでもいるような女の子が、「恋」によってある意味その平凡な人生を狂わされるほどの気持ちになったことが発端だったこととか、孝雄の母から見た視点だとか、雪野が「美し過ぎる」人間であったが故に起こった悲喜こもごもな過去などは小説を読まなければ分からなかった訳で、より物語をかみしめる事はできたと思います。
 
何より、映画では二度と会う事がないのではないかと思われる二人ですが、小説版では20歳と32歳になった二人のその後、再会のシーンが描かれます。
 
噂や見た目、そういった外部の情報には目もくれず、雪野の「中身」を知り惹かれた孝雄。
自分に似た何かを見つけて、少しずつ「歩き方」を取り戻していく雪野。
 
歳の差12歳の恋。
映画では雪野の気持ちが淡く淡く描かれているので分かりませんでしたが、小説を読んで嬉しくなりましたよ。
 
実際自分が33歳なので12個下と考えた瞬間に「ないわ」と思ってしまう現実ですが(笑)
 
こんなにも惹かれあう相手に出会えるなんて、本当に奇跡みたいなものだと羨ましくなりました。
 
また、万葉集の和歌がこんなにも素晴らしいことに改めて気付かされます。
 
なるかみの すこしとよみて さしくもり あめもふらんか きみをとどめん
 

蛇足ですが、この雪野というキャラクター。
映画版・小説版の「君の名は。」にて雪ちゃん先生という形で登場します。
あの「誰そ彼」の説明をしているシーンの女の先生ですね。
 
そしてこの小説に、勅使河原とサヤちんが出てきました!
この小説では東京在住という設定らしいので同一人物ではないようですが(笑)、意外な登場に驚きつつも、こういうのは嬉しいものですね。
 
長くなりましたが、個人的にはやっぱり映画版の方が絶対いいと思います。
より深い世界観に酔いしれたい方は、映画→小説と読んでみるのもいいかもです。
 
(4点)