毎日新鮮な花束を買っては捨て、墓参を欠かさなかった女。その行動の裏に隠された、アリバイ作りとは違う「ある企み」とは?謎解きの先に潜む人間の心の奥を描いた「花を捨てる女」、女性同士の友情がいつの間にか悪意の執着に変わる「アイデンティティ」など、円熟の筆致が冴える傑作ミステリー6篇を収録。
夏樹静子さんの本です。
今邑彩さんと同様、夏樹さんってやっぱり外れがない。
どの作品も面白いのですが、とりわけ短編の秀逸さは群を抜いていると思います。
短編の短さでぐっと読者を惹きつけて最後に「あっ!」と言わせる作家ってどれだけいるかな。
特にその「あっ!」となる作品が集まった一冊でした。
女のしたたかさ、上辺だけでは分からない黒い部分。そんな「普通」の何処にでもいる人間が犯罪に手を染める動機。
こんな風に理由は単純なのかもしれません。
「尽くす女」「家族写真」「三通の遺言」にはすっかり騙されました。
面白かったです。
(4.5点)