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メビウス・ファクトリー

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町の住民のほとんどが働く巨大工場。 しかし、そこで何が作られているのか、 実は、誰も知らない――。

妻子を連れて地元の町にUターン就職し、街一番の工場に就職したアルト。
完璧な管理システムを持った工場は、町民の誇りと憧れの存在だったが、
アルトは働き続けるうち、徐々に工場の“秘密"に気づきはじめ――。

三崎亜記さんの本です。
 
いつもの表紙と違う雰囲気だったので、もっとSF的設定なのかなと構えていたんですが、いつもの三崎さんでした。
というか、いつもより読みやすくて入り込みやすかったかな。
 
完全に新興宗教の世界過ぎる・・・!
怖いです、こんな風に洗脳と思われないレベルで住民達がその世界感に入り込んでしまっている様は。
 
Uターン就職したアルトが戸惑いながら町のシステムに馴染んで行く様・・・までは平和に思えた展開も、町のゆがみが少しずつ見えてきた瞬間、一気に不穏な雰囲気に変わっていきます。
 
3人の視点で物語が進んで行くのですが、結局この町がどうしてこんな仕組みになっているのかとか、黒幕は結局誰なの?とか具体的な話は何も書かれていません。
ある意味で読者にゆだねられている訳ですが、書き続けようと思えばこの厚さの2倍は書けそうな壮大なストーリーでしたね。
 
最後の方は国家間の機密というか、政治的要素も絡んできてかなり黒い印象。
洗脳されている町民が元さやに戻ってきているのもまた怖く、三崎さんならではのこの世界感は今回も健在でした。
 
それにしても、三崎さんの頭の中の引き出しは一体どうなっているんでしょう。
さも実際に存在するかのように書かれる世界感。
毎回突拍子もない世界に私達を連れて行ってくれますが、ほんと凄い作家さんですね。
 
そしてやっぱり三崎さんの書く女性は好き。
(4点)