地元ラジオ局で番組をもつ高校3年生のカナとトモ。進路決定を目前に、二人の未来への夢はすれ違い始めて…せつなさ120%の青春小説。
加藤千恵さんの本です。
加藤さんの本って、実はちゃんと読んだことがないかも。
アンソロジーでは何度か読んだ事がある気がするのだけれど・・・
という訳で、多分このタイトルでなかったら読む事はなかったかもしれない作家さん。
書店でこの本を見つけて、気になって予約していたものでした。
というのも私、この物語の主人公と同じ世代に高校生だった人。
物語中に登場するヒット曲もリアルタイムで知っているし、他人事とは思えない。
中学3年。高校受験の勉強中のお供に、その頃からずっとラジオを聴いているラジオっ子です。
ラジオを通して知った音楽。
青春時代に聴いてきた沢山の音楽との出会いは、ラジオでした。
テレビでは感じることのできない、リスナーとパーソナリティのあの距離感。
遠くにいるはずなのに、近くにいるようなそんな温かさが好き。
今みたいにエリアフリー、タイムフリーでいつでもどこにいてもラジオが聴ける、というような機能はない。
簡単にネットで曲を聴いたり、落としたりすることもできない。
だからこそ、ラジオで好きな曲がかかると物凄く嬉しくて、ラジオを録音して何度も曲を聞いたり、CDを探して買ったり。
そういった青春時代の諸々が浮かんできて、何とも甘酸っぱいような気持ちになりました。
物語は、ラジオDJに応募し友達と2人でDJをしている高校生の女の子の話。
どうやらその友達がDJを始めた当初のような盛り上がりをみせてくれなくなり、過去の楽しかった思い出との対比が切なさを醸し出している。
一体何があったのかしら?
同時に語られていく、ラジオを始めるきっかけになった思い出と現在の温度差。
何が起こる訳ではないのに、何だろう。この胸がしめつけられるような感じ。
上手いなあ。
敢えてこの時代の話にした、というのが現代にはないものを感じさせてくれていい。
そうそう、ネットも使えば使うだけ電話料金がかかっていたっけ。
MDも現役でした。
懐かしい。そして切ない。
好きだな。
同時収録の「青と赤の物語」の世界感も好みでした。
他の作品も読んでみたいなと思いましたね。
(4点)