売れない舞台役者・加納慎策は、内閣総理大臣・真垣統一郎に瓜二つの容姿とそ精緻なものまね芸で、ファンの間やネット上で密かに話題を集めていた。ある日、官房長官・樽見正純から秘密裏に呼び出された慎策は「国家の大事」を告げられ、 総理の“替え玉”の密命を受ける 。慎策は得意のものまね芸で欺きつつ、 役者の才能を発揮して演説で周囲を圧倒・魅了する 。だが、直面する現実は、政治や経済の重要課題とは別次元で繰り広げられる派閥抗争や野党との駆け引き、官僚との軋轢ばかり。政治に無関心だった慎策も、 国民の切実な願いを置き去りにした不条理な状況にショックを受ける。義憤に駆られた慎策はその純粋で実直な思いを形にするため、国民の声を代弁すべく、演説で政治家たちの心を動かそうと挑み始める。そして襲いかる最悪の未曽有の事態に、慎策の声は皆の心に響くのか――。
中山七里さんの本です。
以前読んで微妙だった「月光のスティグマ」とのリンクがあると聞いていたので読んでみたいと思っていたのですが、政治に興味がない自分には難しいのでは？とタイトルから敬遠しておりました。
ところが、後半はどっぷりと物語にはまっていました。
姿形がどんなに似ているとはいえ、総理大臣の替え玉をすることになった主人公。
普通にばれない訳がないし、都合よく協力者がいたりとうまく行き過ぎ感はあるのだけど、エンターテインメントと思って読めばそんなのも最早気にならなくなってきます。
なにより、難しい政治をかみ砕いて国民に伝えようとする真摯な姿勢、庶民だからこそ政治の矛盾に気付き、是正しようと奮闘する様はとても格好良い。
もしこんな人が首相だったら、時間はかかっても今抱えている日本の問題も解決していくのではないか・・・と想像してしまうほどでした。
この後総理を続けていってぼろが出たりしないのか？大丈夫なのか？？と突っ込みたい所はあるものの、ラストは何とも微笑ましく、読み応え十分の本でした。
続けて犬飼シリーズを読んでおります。中山作品はどれも飽きさせない魅力があるなあ。
（4.5点）
