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アポロンの嘲笑

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“管内に殺人事件発生”の報が飛び込んできたのは、東日本大震災から五日目のことだった。被害者は原発作業員の金城純一。被疑者の加瀬邦彦は口論の末、純一を刺したのだという。福島県石川警察署刑事課の仁科係長は邦彦の移送を担うが、余震が起きた混乱に乗じて逃げられてしまう。彼には、命を懸けても守り抜きたいものがあった―。

中山七里さんの本です。
 
中山さん、結構原発に関して思うところがあるのか、ちょいちょい小説の中に話を盛り込んできますが、今回はもろに福島を舞台とした震災後の話でした。
 
私は茨城が地元ということもあって、福島は近いのでよく旅行に行ったりしていました。
自然や雰囲気が何だか懐かしいような心地良さで東北の中で一番好きかもしれません。
 
だからこそ、福島県民には何の罪も原因もないのに、原発風評被害や実際にその地に戻ることができなくなっている人々の事を思うとやりきれなくて仕方がないです。
 
この本の中で原発事故のもみ消しや過酷な作業場の現状が出てきたりしますが、これが本当に事実だとするならば(そう思いたくないけど)、何処に怒りをぶつけていいのか分からなくなります。
 
殺人犯である加瀬の過去から今に至るまでがかなり過酷で、最後の最後までいいことがない感じなのが辛かったですが、人物像には何処か惹かれるものがありましたね。
加瀬を追う刑事も良かったですし。
 
色々考えさせられる一冊でした。
(4点)