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武道館

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本当に、私たちが幸せになることを望んでる?恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業…発生し、あっという間に市民権を得たアイドルを取りまく言葉たち。それらを突き詰めるうちに見えてくるものとは―。「現代のアイドル」を見つめつづけてきた著者が、満を持して放つ傑作長編。

朝井リョウさんの本。
 
A○Bが出てきたあたりから、アイドルと普通の女の子の垣根がなくなってしまった気がする。
 
アイドル=可愛い
 
という方式が成り立たなくなった。
いや、大分広い目で見たら「可愛い」のかもしれない。
 
けど、決して目を引く「美人」ではない。その人にしかないような「魅力」を感じられるようなアイドルは果たしてこのアイドル戦国時代に一体どれくらいいるのだろう。
 
普通の中高生っぽいな、と思ってしまうほど個性のない女の子達。
 
そんなアイドルに憧れてアイドルになろうとする普通の子。
 
これだけ似たようなアイドルが乱立する中で、どう個性を出していくか。
どうやって知名度を上げるか。CDを売って、オリコンチャートに名前を連ねるか。
 
握手会のチケットを同梱したり、「会いに行けるアイドル」として売り出してみたり、恋愛禁止にしてみたり――
アイドルの制約はとても多くて、そのくせ一般人との距離は物凄く近い。
 
簡単に過去の恋愛スキャンダルは流出する。
一般人に近づいたことで、情報が簡単に流れてしまう。それってなんだか凄く怖い事だなと思う。
 
A○B、モ○娘、モ○クロ・・・有名なアイドル達の境遇と似たものがこの本の中にも散りばめられているけれど、アイドルであっても普通の女の子であり、恋愛もするし、進路で悩みもする。
 
この本の主人公の愛子はアイドルではなく別の道を選び取ったけど、不思議とその選択を応援したいと思えた。
 
読み始めから「終わり」に向かって行くような感覚があって、朝井さんのことだから最後にまたガツンとやられるんだろうな、と構えていたので、幼馴染みの大地が変わらず愛子を受け入れてくれる存在のまま変わらなかった事が一番ほっとしたし、嬉しかったな。
 
何が言いたいか分からない感想になったけれど、ぐいぐい惹きこませる。 
アイドルには興味もそんなにないし知識もほとんどないけれど、十分楽しんで読む事ができた。
 
個人的には朝井さんが書くのは男の子の主人公の方が好きかも。
男性作家とは信じられないほど、女子同士のドロドロを描くのが上手すぎて読むのがちょっと苦しい時もある。
男版・辻村深月さんだよなあ、朝井さんって。
(4.5点)