No-music.No-life

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よるのふくらみ

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その体温が、凍った心を溶かしていく。29歳のみひろは、同じ商店街で育った幼なじみの圭祐と一緒に暮らして2年になる。もうずっと、セックスをしていない。焦燥感で開いた心の穴に、圭祐の弟の裕太が突然飛び込んできて……。

窪美澄さんの本です。
 
凄く好き。とても好きです、こういう小説。
 
タイトル、あらすじ、兄弟と一人の女性の三角関係?という感じのイメージだと、もっと単純に性描写が多かったり、ドロドロな話になりがちだと思うんですが・・・
窪さんはそんな作家ではなかったです。
 
窪さんのデビュー作「ふがいない僕は空を見た」を彷彿とさせる印象も残しながら、しかし確実に成長していることがうかがえる作品。
いや、成長とか上から目線過ぎますけども。
 
兄弟がなぜみひろにそんなに惹かれるのか、みひろ視点から見るといまいち魅力が伝わってこなかったのですが、みひろ・弟・兄の目線で交互に物語が展開していくので、みひろの何だか幸薄そうな儚げな印象は確かに惹かれるものがあるなあと思ってきて。
 
そして兄、弟のそれぞれの性格の違い、考え方の違いがはっきりしているので、勿論恋愛の仕方だって全然違う訳ですよ。
そこが切なかったり、もどかしかったりしていいんですよね。
 
三人共に幸せになれない展開にだって十分できるストーリーなのに、最後に一番すんなりと納得できる形でまとまったのも良かったです。
 
上手く表現できないのがとてももどかしいのですが、うん、こういう小説は本当に好きだと再確認した話でした。
 
しかし窪さん、上手すぎます。
(5点)