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この部屋で君と

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誰かと一緒に暮らすのはきっとすごく楽しくて、すごく面倒だ。「いつかあの人と同じ家に住めたらいいのに」「いずれこの二人暮らしは終わってしまうんだろうか」それぞれに想いを抱えた腐れ縁の恋人たち、趣味の似た女の子同士、傷心の青年と少女、出張先の先輩と後輩、住みついた妖怪と僕……気鋭の作家8名がさまざまなシチュエーションを詰め込んだひとつ屋根の下アンソロジー


徳永圭
 
朝井さん、飛鳥井さん目当てで。越谷さんも好きだし、坂木さんも好き。
三上さんはビブリアで読んでいるし、アンソロジーで吉川さんも似鳥さんも読んだ事あるな。
 
ということは、徳永さんだけ初めての作家さんだったのか。
 
部屋のアンソロジーなのかな、と思ったら、その中でも1つの部屋(家)で誰かと生活する、というテーマの中で書かれている模様。
 
いやもう!久々にアンソロジーでのヒットだったかもしれない。
「一つ屋根の下」をモチーフに、よくもまあこんなに色々な設定が浮かぶなあと感心するほど。
 
どの話も被っていないし、現代的なもの、時代設定が昔のもの、現実的な話、神様が出てきたり、地元のメイド喫茶で働いていた、東京に上京してきた漫画化志望のあの人とか(「いとみち」で出てきたあの人!)、女装する男の子とか、いやもう本当に色とりどりのストーリーを堪能させていただきました。
 
一発目の朝井リョウさんから、もうぐいぐい引き込む。
多分この話だけ凄く後味の悪い感じなんだけど、何だろね。朝井さん・・・男版辻村深月か!というくらい、女子の面倒くさいあの感じが凄く上手く表現されている訳ですよ。
 
女の子と二人組になることが昔からできなかった女の子が、同居していた姉が結婚で出ていく事になり、新たなルームメイトを探すため、まるでテ○スハウスのような番組が大好きだという女友達を誘うため、必死でインテリアや雑貨を集めるのだが・・・・。
もうほんと、朝井さん天才だと思いました。上手すぎる。
 
飛鳥井さんはいつもの通り安定していて、越谷さんはまさかの「いとみち」のスピンオフになっていてテンションが上がるし、坂木さんは一筋縄ではいかない「女子」に驚くし、初めて読んだ徳永さんの話も希望が持てる展開で良かったし。
似鳥さんはまさかの神様が登場する不思議な展開だけど、映像が脳裏に浮かぶリアルさがあったし、三上さんは時代設定が唯一古いものだけど、今では珍しくもない木造ではない集合住宅を選んだ理由というのが何とも切なく嬉しいようなしっとりとした気持ちにさせてくれる。
吉川さんはR-18文学賞受賞者というイメージを裏切らない描写は今回も健在だけど、多分このアンソロジーの中で、一番リアルで現実にありそうな話だからこそ、じわじわと後から良さが分かる話でした。
 
自分も一人暮らしを始めて今年で2年目になるのですが、次の更新から2人暮らしになる予定(まだ予定ですが)なので、実家暮らしだった時にはイメージしにくかったこういう話を、より現実的にイメージして味わえるようになったのは良かったなあと。
 
長々と感想を書いてみましたが、アンソロジーが苦手な私には久々にかなり満足した作品でした。
購入しても損はないと思いますが、気になったあなたはまず図書館で借りて読んでみてくださいな。
(4.5点)